閑話:にーの居ぬ間に


にゃーん、とにーが尻尾を揺らして窓から外へと出ていった。
「夜道には気をつけるんだぞー」
蒸し暑い夏の夜。
冷房のきいた部屋の中にむわっとした外の空気が入ってくる。
それだけで汗ばみそうだ。
にゃーと返事をするようなにーの鳴き声がして、そのあとはシーンとした。
にーも一応はネコなだけに散歩もする。
最近日中暑いせいか夜ふらりと散歩に出ることが多い。
可愛いにーが変なやつにつれていかれないか迷子にならないか人間にいきなり変身したりしないかーって最初は心配していたけど―――まぁ大丈夫だな、といまは思ってる。
で、だ。
ここ数日夜のお散歩に行くにーは戻ってくるのが軽く2時間は経ってからだ。
その間俺はフリーだ!ということに気づいたのが一昨日だ。
にーは猫だけど人間にもなったりするしで、ただの飼い猫って感じじゃない。
そのせいで、だ。
俺はにーを拾ってからというものあまり……オナニーをしていない!
恋人はいないし、たまには発散させなきゃならない、と思い至ったわけだ。
まぁ……不本意にトイレと右手がお友達状態になってしまうことは多少なりともあったわけだが。
だかしかしだ!
男としてはやはり準備万端で望みたいだろ!
AV見ながらしこしこしたいだろ!
―――というわけで、っていうかぶっちゃければ数日前ゲイ仲間から新作ゲイビ借りて俺は見るタイミングを見計らっていたわけである。
さすがににーのいるところで見ることはできないしなー。
夜に溶けるように消えていったにーの姿を見送って窓を閉めた。
そしていざ出陣!
いそいそと"雄っぱい惑星の秘宝!生命のみるくを求めて!"というよくわかんねーけど冒険SFもので、ガチムチが雄っぱい惑星で触手やら現地人たちにやられまくるらしい。
みるくを求めてってのはきっとあれだろうけど。
それにしてもこんなイロモノゲイビよく見つけるなァと、ゲイ仲間の鈴原を思い出しながらDVDをセットして再生し始めた。

***

タイトルはアレでたいして期待していなかったけど、わりといいゲイビだ。
まずガチムチの筋肉がいい!
顔もなかなかいいし、襲われて乱れている姿は扇情的で俺はしこしこと息子を扱いていた。
いまは触手に絡まれたうえでの現地人ふたりに串刺しされてるというなかなかのハードな場面。
すっかり見入っていた俺は集中力マックスで、俺の息子ももうすぐマックスになりそうだ。
「……っ、は」
手が動くままにひたすら扱く。
もちろんそろそろだろうとティッシュも添えて。
『雄っぱいもっと吸ってぇ!』
ガチムチがムキムキの胸を突き出して叫んでる。
そのまわりでは『みるくみるく雄っぱい雄っぱい!』と歌い踊りセックスをはやし立てている現地人たち。
―――萎えそうになるのも集中力さえ発揮すれば問題なし!
俺は発射に向けてさらなる集中力を高め、そして―――!
「う、……っ、は……っ」
しこしこしこ、と。
もう、イク―――!
「リョータ!」
「りょーたぁあああ……あ!?」
集中力でもって高みへと駆け上がっていた俺は、頭の中にはいりこんできた言葉をテンションのまま叫んで。
それが自分の名前だと気付いた。
「……」
扱いていた手を止めて、おそるおそる横を見る。
と、いつのまに帰ってきたのかっていうかああああ、猫ではない美少年の姿のにーがきょとんと俺のとなりにいて。
「にゃん?」
てい、と不思議そうに発射寸前だった俺の息子に顔を近づけて、猫パンチしてきた。
「……ッ、う」
びくびく、と俺の意思に関係なく身体が震えてそしてそして俺のみるくが勢いよく飛び出した。
もとい、セーエキが。
「ん、にゃー」
「……」
びゅる、とにーの顔に。
「……」
「にゃ、にゃ……?」
白濁がにーの可愛い顔にべっとりとついて、それをにーがぺろりと舐めた。
「……ッう、うわあああああああ!!!」
マズーって顔したにーだけど、それどころじゃない!
たったいま放出したばかりだっていうのに、衰えるどころかゲイビの非でなくムラムラなんでするんだああああ!
と、俺は涙ながらにトイレへ走って、欲望の赴くままに再び息子を扱きあげ、二度目を最果てを見たのだった。

賢者タイムは海より深く。
抜け殻のようになった俺はにゃあにゃあと鳴く声と、ドアに爪をたてる音にようやくハッとしてトイレを出て。
「……ごめんな」
子猫にーのさらふわな毛並みにこびりついた白濁を、後悔とともに洗いとってやったのだった。


―――ああ、どうせならもうちょっとちゃんと顔射すればよかっ……、なんて思ったりしてない、してないんだからな!



おわり☆

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