「ハッピーエンド」のBL小説を読む
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俺とにー。


ネコを拾った。
チャコールグレーのような、ブラウンのような、いろのことは詳しくはわからないけど毛並みのととのった、可愛い子猫だ。
みゃあみゃあと寒空の中鳴き声がしていて、小さな箱にいれられていた子猫は藍色のつぶらな目を俺に向けた。
「……お前、捨て猫? 俺とくる?」
24歳、一人暮らし。
実家には二匹のネコがいて、俺自身ネコが大好きだ。
いまはアパート住まいだけど、いずれネコが飼いたくてペットオッケーなところを借りていた。
「お前美人だな。って、オスか」
手を伸ばした俺の手にすりすりと物おじせず頬を擦りつけてくる子猫。
人間なら確実美少年間違いなしだろ、ってくらい可愛いその猫を抱きかかえると、子猫用のキャットフードを購入しにスーパーへ立ち寄ってから帰路についた。

***

ミルクと、キャットフードを美味しそうに食べる子猫を眺め、俺もコンビニ弁当を食う。
いつもならテレビだけの音しかない部屋に、子猫の鳴き声がまざってることに癒される。
弁当をあっという間に食って子猫のそばに。
「うまいか?」
額を指でくすぐるようになでると、目を細めた子猫は俺を見上げて、「にゃあ」と鳴く。
あーまじで可愛い。
仕事のストレスとかいっきに消えてく気がする。
「お前の名前も決めないとな。何がいいかなー。今日は2月23日か。うーん。……思いつかねぇな。ま、そのうちでいっか」
「みゃー」
俺の言葉に不服とでもいうようにぺろり、子猫が手を舐めて見つめてくる。
「……え、いま決めろって? うーん」
子猫を抱きかかえて背中を撫でながら、実家のネコたちを思い出す。
実家の飼い猫は母親が名前をつけたから、俺はノータッチ。
ユニとクマっていう名前だ。
二文字がいいかな? 二月にがつ、にがつ。
「……”にー”は?」
安直っていうか、なんだそりゃって名前だ。
俺に名づけのセンスがないことは百も承知。
「にゃあ!」
だけど、子猫は嬉しそうに鳴くとぺろぺろと俺の顔を舐めてきた。
「いいのか? にーって呼ぶからな?」
「にゃー」
というわけで、子猫は”にー”という名前に決まった。
それからにーと遊んで、俺は風呂に。
一日の疲れ……といっても今日は休日だからたいして疲れてはないがゆっくりはいる。
明日からまた仕事だと思うといつもは憂鬱だけど、今日からにーがいるからそうでもない。
鼻歌なんか歌ってしまうくらい上機嫌で風呂からあがり、タオルで髪拭きながらリビングへと戻る。
と、にーの姿が見当たらなかった。
「にー?」
どこかに隠れてんのか?
子猫だからヤンチャだろうしな。
そんなことを考えながらリビングを見渡し、二間続きになっている寝室のベッドが目の端に映って、心臓が跳ねた。
「……」
いま、ベッドの上に足が見えた気がする。
人の足。
でも一人暮らしのこの部屋に、人がいるわけない。
いるわけ、ない、よな?
恐る恐る視線を向け、同時に、
「みゃぁ」
鳴き声がした。
にーの鳴き声が、ベッドの方から。
「……」
思わず口を大きく開く俺。
その目に、ベッドの上で寝そべっていた―――全裸の少年が片肘をついて俺を見る。
何歳くらいだろうか。
11、12?
もっと下か?
可愛らしい顔立ちをした少年は眠いのか目を潤ませて俺を見ていて―――……って、え?
その頭にはネコ耳がついていて、そして尻尾が。
「……」
「みゃあ」
にーの、鳴き声が、その少年の唇からこぼれた。
「……え」
いやいやいやいやまさか。そんなわけあるはずない。
思わず自分の頬をつねる。
「みゃあ」
「き、君はいったい」
「みゃあ」
可愛い鳴き声はやっぱりにーのものだ。
いや、でも。
―――というか。
「ちょ、ちょ、ちょっと、お前服着ろ!!」
ベッドの上で白いすべすべの肌、華奢な身体が目に痛くてシャツをチェストから取り出して、おそらくにーに着せた。
人間みたいになってるなら人間の言葉も喋れないのか?
どう聞いても、にーの鳴き声を発しているこの少年をまじまじと眺める。
「みゃあ」
俺のシャツはにーにはデカすぎてかなりぶかぶかだ。
裾から出た尻尾が楽しそうに左右に揺れていて、にーは俺に抱きついてきた。
「お、おいっ、お前、にーなのか?」
「みゃあ」
ネコの時ならともかく、いまは普通の人間で。
しかもものすごく密着してるし、しかもしかも―――彼シャツ状態の美少年にーは妙なえろ……って俺は変態じゃないけど! ショタスキでもねぇけど!!
なんか変な色気があって。
カミングアウトするならば実はゲイの俺は―――ってでもここまで年下は範疇にない。
「みゃあ」
にーは自分が人間になってるってことに気づいてるのかいないのか。
自分の手を毛づくろいするように舐め顔を撫でながらも俺にすりすりしてくる。
ベッドの上、久しぶりの自分以外の体温。
それが身体に絡みいてて、俺の首に吐息があたる。
「みゃあ」
華奢なにーが俺を見ると上目遣いになり、そしてデカイシャツのせいで露出した肩やら鎖骨が……やっぱりエロくさくて。
「ちょ、ちょっと離れろ」
俺は変態でもショタコンでもない、と自信を持って言えるはずなのに、妙に、なんだかムラムラしてくる。
いやいやいやいや、ありえないだろ!!
「……っ、にー」
「みゃぁ」
やばいやばい、俺おかしい!
にーから離れようと身を捩ったら、可愛い声でひと鳴きしたにーがぺろりと俺を舐めた。
ちょうど唇を。
「……うっ」
「みゃー!」
俺は思わずにーを押し返すとトイレに駆け込んだ。
「……俺は変態じゃない変態じゃない」
そう呟きながら、さっきの一瞬で一気に反応してしまった半身を泣く泣く慰めながら。
いやでも―――だってさ、まじでなんかエロかったんだ、といい訳だけをしていく。
いまだかつて犯罪だろな年下相手、しかも化け猫かもな相手をおかずに抜くことなんて当然なかった。
そんな自慰行為のあとの賢者タイムはハンパなく気持ちが凹んで。
俺はゆうに30分以上はトイレからこもって部屋に戻った。
こわごわとのぞいたベッド。
そこには俺のシャツがあって、
「……なんだ」
それに埋もれるように俺が拾ってきた子猫にーが寝ていた。
戻ったのか。
と安心しつつ、いや俺の幻覚幻想か?と頭痛を感じる。
そっと近づいてにーを撫でる。
小さな小さな身体、体温。
「……なんだったんだろう。さっきの」
よくわからないまま、俺はそのままベッドにもぐりこんだ。
「……きっと、幻覚だよな」
疲れてたのかな、って目を閉じて。
いつもより早い時間に、にーの体温を感じながら眠りについたのだった。


そして―――
――――
―――


「……ん」
アラームの鳴る音に意識が浮上した。
時計に手を伸ばそうとして、身体に絡みついた腕に気づく。
そういや俺も華奢な身体を抱きしめていた。
アラームを止めて、二度寝よろしくまた華奢な身体に手をまわして。数秒。
「―――……ッ!??」
跳ね起きて、
「っ、に、にー!?」
俺は隣に寝ている猫耳尻尾ありの人間になっているにーに瞠目して。
にーはごろごろとしながら俺の腰に手をまわし額を擦りつけてきたんだけど。
そこが俺の股間で。
「ッ、う、う、うわー!!!」
朝勃ちしてた半身の匂いを嗅ぐようにくんくんしてくるにーに、俺はまた朝っぱらからトイレに駆け込むことになったのだった。

こうして―――拾い猫によって、俺の日々は一変することとなったのだった。


*おわり*

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