2 日常という名のいま@


微妙に暑くて目が覚めた。
寝るときに冷房23度で設定していたはずなのに、枕元のリモコン見たらドライで27度になってる。
お袋の仕業に間違いない。
ため息つきながら設定変えつつ時計を見ればもう昼の12時を過ぎているくらいだった。
大学も夏休みにはいって、バイトやらなんやらすることはたくさんあるのかもしれないけど毎日毎日活発に活動してるやつなんてどれくらいいるんだろうか。
俺はマイペースにこうして日中までだらだら寝て、
「陽(ヒカル)〜!! もうお昼よ! お昼ご飯できてるからいい加減下りてきなさい!」
お袋の怒鳴り声でようやくベッドから抜け出るっていう生活のほうが多い。
ノックもなしに入ってくんなよ。
って言いたいけど扶養されてる身だしデカイことは言えない。
わかった、と返事をして欠伸混じりにスマホを持ってリビングへと向かった。
階段を下りているとリビングから玄関へと歩いている弟の姿。
5歳下の弟の達哉は中3で受験勉強の真っ只中。これから塾なんだろう。
達哉は足音に気づいたのか俺を見る。
「今日もそうめん」
「マジで」
昨日もそうめんだった昼メシ。
そうめんとおにぎりっていうシンプル過ぎる昼飯は食べざかりの達哉はもちろん俺にはもの足りない。
「から揚げもあったけど、食った」
「は? 一個くらい残しておけよー」
「ごめん。帰りにからあげくん買ってきてやる」
「まじで? サンキュー」
行ってきます、と良くできた弟は玄関を出ていって俺はリビングへと入った。
エアコンがほどよく効いた室内。
ダイニングテーブルに用意されたそうめんとおにぎりを目に留めながら席についた。
お袋ももう食べ終えたのかソファでテレビを見ている。
静かな部屋の中にお昼のバラエティ番組の音が響いてる。
「陽、今日はでかけないの?」
早速めんつゆに薬味をぶっこんでそうめんを食っていたらお袋が振り返って聞いてきた。
「あー今日は家にいるかな」
「ふーん。明日は出かけなさいよ。お昼ご飯作るの面倒臭いし」
「……」
気持ちはわからないでもないが、そうはっきり言うか?
俺は無言の返答でそうめんを食べていった。
俺の家は親父とお袋と俺と弟の4人家族。
俺が中学にあがるときにマイホームを建てて現在に至るごくごく普通の家庭だ。
ただ親父とお袋は再婚で、俺はお袋の連れ子だったから血は繋がってないけど。
でも親父は俺にとって親父だし、弟も半分だけ血が繋がった大事な弟だ。
問題なんて全然ない家族だった。
梅の入ったおにぎりを食いながら俺もから揚げが食いたかったなとしみじみ肉を欲する。
そうめん食っておにぎり食って、スマホいじりながら―――あとでコンビニにでも行こうかと考えていた。
なんでもない日常のなんでもない昼下がり。
それにヒビが入ったの一本の電話だった。

***

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