灰色の糸 1



「啓介ってさ、ずっとゲイ?」
「そうだよ」
「いまは恋人いないの? ひとり?」
「いたら陽とこんなことしてないよ」
「そうだよな」
「それに―――もうずっとひとりだな」
「寂しい?」
「多少はね。陽は? いつから?」
「さあ、気づいたときには……かな。女の子も可愛いとは思うんだけど、勃たないんだよな」
「そっか……」
「啓介は? 37年間一度も女と付き合わなかった?」
「……」
「あるんだ? どうだった?」
「……結婚したことがある」
「えっ!? マジで?」
「……少しだけだけど」
「てことはバイ?」
「……いや。……一度だけだよ。女性としたのは。結局俺が……」
「……やっぱり女じゃダメだった?」
「……彼女のことは女性では一番好きだった。それに……結婚したことは後悔していない。結果彼女を傷つけたけど……少しの間でも幸せだった」

後悔はしていない。

そうもう一度言って切なそうに啓介さんは微笑んだ。


なあ。

本当に、後悔、してない?

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