夢の途中 6


―――信じられない。

「嘘、だろ」

重なった熱に、目を背ける。

「捺くん」
「智紀さん……っ、なんで、嘘って言ってくれよ」
「……嘘……」

虚ろな目をした智紀さんがゆっくりと俺の頬を撫でて―――笑った。

「そう、嘘、だよ」
「……」
「全部、嘘だよ」
「……」
「ね、捺くん」
「……うん、知ってたよ。だって今日は」

「4月1日だもんねー」
「エイプリルフールだし!」
「そうそう。嘘ついてもいい日だからねー」
「4月バカって言うよね」
「作者バカだからいいんじゃない」
「ひど! 一生懸命書いたのにー!って怒るよ」
「怒るって言うかコレ書きながら怒られないか心配してると思うよ」
「ああ、読者さんに?」
「そうそう。いつもかっこいい智紀くんをヤンデレ仕様にしてー!とかさ」
「……いや別にかっこいいとは限らないんじゃない?」
「まァ確かに、ヤンデレ智紀もカッコいいってファンの子は言ってくれるだろうけど」
「いやだから……もういいよ。智紀さんはかっこいいでーす、これでいい?」
「うわ、捺くん冷たいねー。優斗にはいつもデレデレしてるのに」
「そりゃ優斗さん大好きだから」
「俺は?」
「普通」
「ひどい! 元上司に! あんなことやあんなことを手取り足とり教えてあげたのに!!!!」
「誤解を招く言い方止めて。つーかもうちょっとはっきり言わないと、これ読んでるひと意味不明じゃね?」

「ああ。仕方ないなー。自分で企画したくせに石投げられるのが(批判)怖くて俺たちに任せちゃってるヘタレ作者ちゃんの代わりに言うとー、まぁこの続編自体がエイプリルフールのネタってことで嘘ってことだよねー」
「嘘じゃねーと困るよ」
「でもほら作者ドロドロ好きだからネタってわかってるくせに感情移入して執筆しちゃってたし? もしかしたらもしかするかも?!」
「ないないないない。だって智紀さんが凹んでる理由とかなんも考えてねーし」
「確かにね。なんかあってずぶ濡れで捺くん襲うっていう設定だけだもんね。なんか、の部分全然考えてないもんね」
「そうそう。それに俺は優斗さんだけだから!」
「相変わらずのろけるねー。俺だって俺だってノンケなちーくんがドキドキハラハラしながら俺のこと待っててくれてるんだから!」
「言い方キモイ」
「だから捺くんは俺に対してちょっと冷たいよ?」
「そういうキャラなんだからいいんじゃない?」

「ま、なんだかんだ楽しかったからいいけど。こういうシリアスな俺もたまにはいいよね〜」
「智紀さんのかなり練習してたもんね」
「だってヤンデレ風味だよ? 捺くんだって真に迫ってたよ」
「いやー一年に一回のことだしー」
「「まぁ楽しかったよねー」」

「ふうん」
「ゆ、優斗さん! 終わったよー!」
「お疲れ〜、優斗」
「……キス、ふりだけじゃなかったの?」
「「……」」
「ずいぶん濃厚だったよね、捺くん、智紀?」
「え、あ、いや、あれはノリで、と、智紀さんのキスなんって全然ダメダメだし!!」
「えー、捺くん気持ち良さそうだったでしょ」
「気持ちよくなんてないし!!!」
「ひどっ」
「俺には優斗さんだけだよ!!」
「じゃあ、いまキスしてくれる?」
「もちろん、よろこんで!!!」
「……ねー俺いるんだけど。いきなりキスはじめないでくれない?」
「智紀はもう帰っていいから」
「帰っていいよ! じゃあね!」


「……ほんっとこのバカップルめ……」

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