封筒×手紙(擬人化)



俺とこいつはずっと一緒だ。
でも最後まで一緒にいれるかっていうとそれはわからない。
こいつにとって俺のかわりはたくさんいるし、俺にとってのこいつのかわりもたくさんいる。
でも本当の意味で俺にとってこいつの"代り"になるやつなんていやしない。

「いつかなー」

俺とこいつ、ひっそり隠れてもう数年。
こいつは自分の出番が来るのを楽しみにしてる。
それはあたりまえのことだ。
埃かぶってくすぶってるより、誰かのもとに想いを届けに行きたい、って思うのがこいつが持つ当たり前の気持ちなんだから。
俺だってもしこいつがその役割を果たすとき、俺がこいつを守って連れていってやれるなら、いつだって役に立ちたいって思う。
だけど、必ず一緒ってわけじゃない。
気まぐれで俺以外の誰からこいつと一緒に旅立ってしまうかもしれない。
どこかに行ったって、あっけなく捨てられるかもしれない。
ずっと一緒って保証はない。

「いいなー」

うらやましーなー。
と、こいつは目を輝かせて机の上に置かれてる他のやつを眺めてる。

「俺も早く誰かのところに行きたいな」

そう思わない?
つぶらな目で期待に夢を膨らませてるこいつに俺は小さく笑う。

「そんなに行きたい?」
「もちろんだよ!」
「俺と離れてしまうかもしれなくても?」

それ、わかってる?
俺がそう言うと、こいつはぽかんとして俺をまじまじと見つめる。

「え、なんで?」
「なんでって俺とお前は"つがい"じゃねーだろ。お前の相手が俺って保証はねーよ」

たぶんそうだろうと思ってはいた。
きっとこいつは気づいてないだろうって。
案の定、見る見るうちに顔を歪めて泣きそうになってる。
その目が外を見て、俺を見て、外を見て―――俺を見つめる。
噛み締めた唇が震えてて、いとおしくなってその身体を引き寄せた。

「保証はねーけど……。誰にもやるかよ、お前のそばにいる役目」
「……へ」

俺の腕の中で、またぽかんとして顔を上げるこいつの額にキスを一つ落とす。

「お前と一緒ならどこにだって行くさ」

泣きだしそうだった顔は今度はあっというまに赤く染まって、さっきまでとは違う意味で目を潤ませた。

「な、なに言ってんだよ」

ばか、と恥ずかしそうに言いながらも、俺の背中に手をまわしてくる。
それに笑って、ぎゅっときつく抱きしめて、今度は唇にキスを落とした。




End.
 
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