キミヲツレテイク 風に揺られてはためくエプロンの白さに目を眇めた。 「今日は風が強いですね」 でもおかげで洗濯物がよく乾きます、という声を横に聞いてラブマシーンは空を見上げた。 「雲の動きが早いな」 「今日は何かありましたっけ」 「特には聞いていない。急な通達でもあったのかもしれないな」 「そうですね」 また一段と強く風が吹いて、ラブマシーンの視界は一面白に埋まった。はためくシーツの海の中で見え隠れするケンジの姿を見て、ラブマシーンは無意識にその姿を求めて手を伸ばした。 「わっ」 掴まえた、と思った瞬間に強い力で引き寄せた。軽いケンジの身体は簡単に自分の元に納まった。 「ラブマシーンさん?」 引き寄せた時とは逆に両の腕で慎重に自分の視線の高さまで抱き上げると、ケンジの手が自分の肩に優しく触れた。 「どうしました?」 案じる様に尋ねてくるケンジの声に、何でもない、と返す。 ケンジを引き寄せてその匂いを嗅ぐと、身体のどこかからじんわりと解けていくように思った。 「外は、夏ですね」 日差しの眩しさに目を細めてケンジが言うと、ラブマシーンは小さく頷いて抱き締める腕の力を少し弱めた。見上げてくるケンジの視線を感じでそちらに顔を向けると、ケンジの顔が笑みの形に広がっていくところだった。その顔を見た時に自分の胸に浮かんだ想いは『愛しい』という以外に当て嵌まる言葉は無かった。 「今度、海に行こう」 唐突に飛び出た言葉にケンジの瞳が驚いた様に瞬いた。 「海、ですか?」 「ああ、嫌か?」 「いいえ、いいえ、是非、行ってみたいです」 「そうか」 嬉しそうに笑うケンジの声を聞いてラブマシーンはケンジの肩に顔を寄せて目を閉じた。 夏、 夏という季節 (―――――ケンジ、お前と出会えた季節だ) 映像だけでなら見た事のある海へ、行こうと言った理由はまだ言わない。 「…きっと似合う」 「ラブマシーンさん?」 何でもない、と小さな声で囁いてラブマシーンはもう一度ケンジを抱き寄せた。 白い花冠はケンジの顔によく映えるだろう。 初めて行く海で、 自分たちの他には誰もいない海で、お前に、お前だけに伝えたい言葉がある。 ワタシたちを繋ぐ確たる証を、 (―――ケンジ) 「楽しみですね」 弾む様なケンジの声にラブマシーンは何も言わず頷いた。 ……………… 100819 …MONAKA様リクエスト、ラブケンでハッピーサマーウエディング、でした。 どの辺りがサマーなのか、ウエディングなのか、え、ハッピー…? 私の乏しい想像力ではこれが限界ですすみません! MONAKA様、リクエスト有難うございましたーっ |