ちょっとした些細な事でも、そこから貴方を知っていく手掛かりになる。
二人で並んで歩いていた時、距離の所為か、ひょっとしてワザとか(出来るなら後者がいい)、お互いの指先が少しだけ触れた。
あ、と思って彼の顔を見ると林檎みたいにその頬が真っ赤になっているのを見付けてしまった。
名前を呼ぼうと口を開く前に、彼が私の名前を呼んでくれた。
「夏希先パイ、」
呼ばれたその名に返事を返さず、そのまま何も言わずに待ってみる。ただ彼の顔を見詰めていると、その顔がさっきよりももっと茹だってしまうんじゃないかってくらい赤くなって(多分その原因であるのは穴が空くほど彼を見ている私なんだろうけれど)、
やがて彼の口から掠れたような声が、
「手を、繋いでも、いいでしょうか」
切れ切れにそんな科白を一生懸命に言ってくれる目の前の人を愛しいと言う以外に何て言えるのだろう。
我慢出来なくなってその手に自分から触れる。自分とは違って少しだけ節くれだった指と、この前比べた時に気付いた自分より大きかった手の平。触れたそこから彼の今までとこれからを思って少しだけ笑った。
ゆっくりと見上げた彼の顔は、嬉しさと、戸惑いと、そして、
「ありがとう、ございます」
はにかんだように笑う彼の顔をこんな間近で見られるのは私だけの特権なのだ。
(誰にも言わないけれど、ね)
内密
100630
……………………
…健夏(健)でした。
いつまでもじれったくいて下さい。