If things go wrong we can knock it down






「ねえ、涼ちゃん」
「なんスか?カズ君」
「真ちゃん遅いね」
「そーっスねえ」
「駅前の本屋に行くってだけなのに、一体どこまで行ってんだって」
「心配っスか?」
「べーつにー」
「別にって、顔じゃないっスよー」
「気の所為だよ」
「そうっスか」
「そう」



「……」
「……」
「……ねえ、涼ちゃん」
「なんスか?カズ君」
「真ちゃんって、さ」
「うん」
「よく、分かんないとこない?」
「うーん、例えば?」
「あり過ぎて全部言えない」
「ふは、あり過ぎって、」
「あり過ぎだよ」
「カズ君、緑間っちに何か言われた?」
「何も」
「何もって、じゃあ、何でそんな顔してるんスか?」
「……そんな顔って」
「うーん、かわいい顔」
「どんな顔よ!?」
「かわいいっスよー、カズ君」
「ちょ、ヤメテ!涼ちゃんにカワイイとか言われるのって何かちょっと違う!」
「ええー、何で?」
「何でも!何か、俺の中の何かが許さない感じがする……」
「そ、そこまでっスか」
「ごめん、嫌な訳じゃないんだ……」
「あ、うん。なんか俺こそごめん?」
「そこ、疑問系なのね」
「うーん、だって俺はそう思うんスもん。あ、勿論カズ君だけじゃないっスよ?緑間っちもかわいいって思うときあるっス」
「……涼ちゃんって、時々すげーと思うよ」
「そう?」
「だって、あの真ちゃんを捕まえて、カワイイって……」
「えー、カズ君は思わない?」
「……俺はまだ涼ちゃんの境地にはいけないな……」
「そうかなー、多分直ぐにそうなるっスよー」
「……本当に?」
「カズ君?」
「本当に、俺、そうなる?」
「……カズ君、」
「俺、なんか分かんないんだ、最近」
「何が?」
「涼ちゃんとは、なんかこう恋人っぽくできるんだけどさ。真ちゃんとだとそれがなんかぎこちないっていうか。真ちゃんが付き合う前と今とで全然変わらないから。俺も、何をどうしたらいいのか分かんなくて。変わったほうがいいのか、そのままでいいのか、そもそも本当に付き合ってんのか分かんなくなって、だってアイツ、」
「カズ君は、俺のこと、キライ?」
「何言ってんの?!好きに決まってるよ!?」
「じゃあ、緑間っちのことは?」
「……キライじゃないよ」
「ふふ、なら、大丈夫っスよ」
「何が大丈夫なの」
「同じこと、言ってるから」
「同じこと?」
「カズ君の今の答え。俺が緑間っちと付き合い始めて暫くしてからね、今と同じ質問を緑間っちに聞いたことがあるんスよ。そのときの緑間っちの答えが、今のカズ君と同じだったんス」
「……同じって」
「『俺のこと、キライ?』って聞いたら、『嫌いじゃないのだよ』って」
「……素直じゃないね、真ちゃん」
「でしょ?」
「涼ちゃんはそれで納得したの?」
「ねえ、カズ君」
「うん」
「緑間っちは、分かりにくいけど、分かりやすいんスよ。だから大丈夫っス。カズ君が不安に思うようなことは全然ないから」
「……涼ちゃん」
「なんスか?カズ君」
「ちゅーしてもいいですか」
「ふふ、いいっスよ」

ちゅ、と可愛らしい音が口元に落ちる。黄瀬は落としていた瞼をゆっくりと持ち上げた。
目の前には頬を少しだけ赤く染めた高尾がいる。
「好きだよ、涼ちゃん」
「俺も。カズ君のこと、大好きっス」
手を伸ばして高尾を引き寄せる。ぎゅうと抱き締めれば高尾は抵抗もせずに黄瀬の腕の中に納まった。ゆっくりと高尾の背中を撫でていると、高尾の手が黄瀬の背中に回された。そのまま思い切り力を込めて抱き付かれて、黄瀬は小さく笑い声を上げる。
「涼ちゃん」
「なーに」
「やっぱり、涼ちゃんの方が俺とか真ちゃんより絶対に確実にすっごくカワイイと思うよ」
「ふは」
「冗談じゃないからね!」
「はいはい」
「涼ちゃん!」
信じてないでしょ!と叫ぶ高尾をただ抱き締めて、黄瀬は早く緑間が帰ってくればいいと考えていた。

(だって、こんなかわいいカズ君を緑間っちに見せてあげられないなんて、かわいそうっスもんね)

くすくすと小さく笑い続ける黄瀬を見詰めながら、高尾は憮然とした顔を隠そうともしない。

(かわいいなあ)

(不安に思って、ぐるぐるいっぱい考えて。でもね、大丈夫だから。最後はちゃんとここに帰ってこれるんスよ)

間近に見える膨れた顔を引き寄せて、黄瀬は高尾の額に愛しさを込めてキスを落とした。





20130421
拍手文でした。
まだ三人で付き合い始めたばかりの頃の話です。緑高黄なのに緑間っちは名前しか出てこないなんて、なんてこと。本当はこのあと帰ってきた緑間っちと高尾君と黄瀬君とでらぶらぶにゃんにゃんする予定なんですけど、拍手文であなた何てものをと途中で冷静になったのでそのシーンはカットです。ふう、危ない。

One and Onlyシリーズは設定にもちょろっと書いておりますが、最初から書くと長い話になります。なんせ中学時代に緑間君と黄瀬君が付き合い始めた頃からの話になりますから。高校で三人一緒に付き合うようになる過程からでもいいんじゃないかとか思うんですけど、無駄にバックグラウンドを広げていく私の悪い癖が。どんとこい。

three-point burstシリーズだってまだ終わりの目途がついてない状態でこれ以上シリーズ増やすのやめなさいよと思ったんですけど、見切り発車ですみません。
サイトに上げていく話はあくまで本編から脇道にそれたこぼれ話的な小話ばかりになるかと思います。
本編書こうとしたら、本気でここにも上げられないような内容なんだぜ……







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