文質彬彬






「だーから、お前もやってみればいいんだって」
「キチローがこう言うんですけど、へーたはどう思う?」
「加藤は行動派だからな」
「それはフォローになっているのかな?」
「なってないか?」
「なってねえな。だってよ、立花。お前だってそう思うだろ?」
「さあ、どうかな」
「三人揃って何の話だ?」
「「「あ、委員長」」」
「随分と白熱しているようだが?」
「あー、ちょっとね?」
「そこで何で俺を見るんだよ」
「だって、発起人はキチローだもん」
「転嫁すんなよ!?」
「で?どういうことかな、立花」
「まあ、大したことじゃないんだが、今部活でやってる練習方法の効率化についての意見の対立というか」
「何となくさっきから聞いていたんだけど、まあ要は加藤が黄瀬を心配しているってところで要約できそうなんだけど、どう?」
「まあ、そんなとこ。……ところで委員長」
「ん?」
「口調、戻ってるよ」
「……あ、しまった」
「親父さんから直せって言われてるだろ?」
「どうも、な。兄さんの口調が離れなくて……困るんだ、わ」
「まあ、他の皆の前では大丈夫だけどね」
「分かってはいるんだけど、つい立花たちとだと気が緩むのか、昔からの癖が抜けないんだ、わ」
「自覚してるなら、いいんじゃないか」
「肝に銘じる、わ」
「……なんかさ」
「涼太?どうした」
「委員長とへーたって仲良いっスよねー」
「ああ、まあそりゃ」
「幼馴染だからな」
「え?!そうなの?」
「あれ、言ってなかったか?」
「聞いてないっス!」
「こいつら家が隣同士なんだ」
「へー、なんか良いっスねー」
「そうか?」
「そうっスよ!こんな美人が幼馴染なんて、どっかのガングロもそうっスけど十分に有り難がらないと罰が当たるっス!」
「なんだよ、そのどっかのガングロって」
「俺、アイツとは比べられたくないな」
「あ、ゴメン、比べた訳じゃないっスよ?」
「おい、だからアイツって誰だよ?」
「そんなことより委員長」
「俺は無視か!?」
「俺たちに何か用だった?」
「ああ、そうだ。黄瀬、悪いんだが、ノート見せてくれないか」
「へ?いいっスけど、どうしたの?珍しい」
「さっきの授業中、少し聞き逃してしまったのでな」
「わ、委員長が聞き逃すなんて」
「まあ偶にはな。私だってそれくらいするぞ?」
「はは、ごめん。なんていうか、そうだよなあ、委員長だって聞き逃すことくらいあるよねえ」
「そりゃあるさ。私も万能でないから、ね」
「委員長はなんでもそつなくこなしちゃう様に見えるから」
「それはお前もだろう?黄瀬」
「え?」
「自覚してないのか?」
「え、や、そんな風に言われたの、久しぶりだな、と思って」
「私と同じ意見を持つ人がいるのか。それは興味深い」
「中学のとき、一番お世話になった部活のマネージャーがね、そう言ってくれたんスよ。だから何でもかんでも無理はするなって」
「いい人だな」
「うん、その子が俺の初めての女の子の友だち」
「会ってみたいよ」
「今度会う約束してるから、そのとき一緒に行ってみる?」
「それは、二人の邪魔になるだろうから遠慮しておく」
「邪魔になんてならないっスよ?」
「私の気持ちの問題だな。別の機会に頼むよ」
「ん、分かったっス。えーっと、はい、ノート」
「有り難う。……やっぱり、黄瀬のノートは分かりやすい」
「へへ、褒められると嬉しいっス」
「……ああ、そうか。ここが抜けていたのか。有り難う、確認したからもう大丈夫だ」
「お安いご用っス!……って委員長?どうかした?俺の頭に何かついてる?」
「いや、……黄瀬、お前前髪伸びたな」
「あー、次の撮影、頭弄るから、やりやすい様に伸ばしておけって言われてて。切れないんスよ」
「ふうん、不便そうだな」
「まあね、気にしなければそれほどでも」
「……ちょっと待て、黄瀬」
「え?」
「確かここに……ああ、あったあった。黄瀬、ここに座って」
「へ? はい」
「よし、そのまま動かないように」
「???」



「よし、できた」
「……委員長?これは、」
「この前部活の皆と買い物に出掛けたときに見付けたんだ。黄瀬に似合うと思ったんだけど、私の見立てもそんなに悪くない」
「……えーと、これ、女の子の……」
「ヘアピンだ」
「お花もついて……」
「向日葵だ」
「すごくキラキラして……」
「お前みたいだろう?」
「へ、」
「……ほらやっぱりな。可愛いものは可愛いものがつけた方が良く似合う」
「は、」

「可愛いよ、黄瀬」



「〜〜っ!」
「黄瀬、顔赤いけどどうかし」
「もおおおおおっ!アキちゃんの天然たらしっ!」
「人聞きの悪い。私のどこがたらしだ」
「うわあああん!キチロー!助けて!」
「急に俺に振るなよ!」
「へーた!」
「すまん、無理だな」
「二人の薄情者―っ!!!」
「こら黄瀬、私のどこがたらしだと」
「アキちゃんが男前なのが悪いんス!」
「……これは褒められたのかな」
「褒められたんだと思っておいた方がいいと思うよ、委員長」
「……立花」
「何?委員長」
「黄瀬は可愛いよな?私は何か間違っているかな?可愛いものを可愛いというのは間違っていないと思っていたんだが……」
「……それは、今度涼太がいないところで答えることにするよ」



「キチロオオオオオ!もうあの子本当にどうにかしてえええええ!!!」
「だから俺に振るなってーの!ハードル高過ぎるわっ!!!っていうかお前が女子か!女子なのか!見た目と中身が間逆なんだよお前らはっ!!!委員長の方が彼氏に見えるってどんだけだよ!」
「だって!アキちゃんがカッコイイのは俺の所為じゃないっスもんーっ!」
「もん、とか言うなーっ!そんなだからお前らは逆カップルとか言われるんだよ!」
「え、そんな風に言われてんの、俺たち」
「委員長の口調や行動もだけど、お前の女子力ハンパねえって方が専らの噂だ」
「え、俺なんかしたっけ???」
「あー、ここ最近じゃ、この前の調理実習だな。お前クッキー作ったろ。何故か女子に交じって」
「あ、うん、作った。手空いて暇だったから」
「それ、作ったやつ、委員長にあげたろ」
「キチローやへーたにもあげたけど」
「それがすげー美味かったって、委員長が周りにベタ褒めしてたんだよ」
「あ、そうなんだー。へへ、また作ったらあげよ」
「……だからだよ!」
「何が?」
「だああああ気付けこの馬鹿!」
「えええ何が馬鹿なの?」
「お前だよ!この馬鹿涼太!」
「ひどっ!キチローの意地悪っ!」
「うるせえっ!ボケ!」



「あそこは何で白熱してるんだろうな」
「まあ、悪気は無いんだよな、両者とも」
「?」




20130109
ある意味、意味は間逆である。






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