「離すなよ」
「離すもんか!」

買い物へ向かう道すがら、二人は並んで手を繋いでいた。ずっとこのまま繋いでいられたら、と柄にもなくエースは考えていた。

「お前は、危なっかしいから、兄ちゃんは心配なんだ」
「そういうの、シンパイショウって言うんだぞ!エース!」
「お前にだけは言われたくないよ、ルフィ」

しししと笑う弟の顔に刻まれた傷跡を見て、チクリと痛む胸の奥をやり過ごし、握る手に力を込める。

「ほら、夕飯のおかず買いに行くんだろ」
「おお!そうだ!今日は何だ?エース!」
「昨日は肉だったから、今日は魚かな」
「魚!肉も好きだけど魚も好きだ!」
「お前は口に入れば何でもいいんだろー」
「そんなことないぞ!」

大きく響いた声に顔を向けると、弟は大きな瞳をきらきら輝かせて笑った。

「エースが作ってくれるものだから、なんでも美味いんだ!」

それが至極当たり前の事、とでも言うようにあっさりと言い切った弟は、兄が茫然と目を見開いていることにこれっぽっちも気付かないで、繋いだ手をそのままに元気よく歩き出すのだ。

「エース、早くいこう!」

「…ああ、そうだな」

真っ直ぐに、一途に、それはルフィのこれから進んで行くだろう道の様に。


「…っくそ、適わないな、本当に」

出てくる言葉とは裏腹に、くしゃりと歪んだエースの口元に浮かぶのはどこまでも優しいものだった。




手に手をとって

100303

……………………
…兄弟です。
もうずっと一緒にいればいい。


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