隔靴掻痒





「さて、どうしようっかなあ」
「涼太はどうするんだ?」
「うーん、いやでもさ、この二択ってどうなんだろうねえ、実際」
「まあ、どちらにしても面白そうだとは俺は思うが」
「へーたは結構そつないからね」
「……お前ら、何の話してんだ?」
「あ、キチロー、お帰り」
「先生見付かったのか?」
「おー、参ったぜ。お前が回収して持って来いよって言った本人がいないとか、マジないわ」
「先生どこにいたの?」
「裏の駐輪場」
「うわあ」
「取りあえず職員室の先生の机の上に回収したプリント置いた後に先生に連絡しに行ったんだけど、本当周りの先生に一声かけてから行けよってなー」
「お疲れ」
「ああ。……で?何の話してたんだよ、お前ら」
「ほら、二学期からの選択体育」
「加藤はもう決めたか?」
「決めたかって、あれ一択しかなくねえ?」
「ええ?キチロー、ダンスにしたの?」
「ちっげえよ!なんでそっちだ!」
「じゃあ柔道か」
「当たり前だろ!男なら!」
「あー、確かに。キチロー柔道着とか似合いそう」
「それ褒めてんのか?」
「褒めてるよ?」
「それじゃ、加藤は決めたんだな」
「ああ。ってお前ら悩んでんのか?」
「うん」
「まあな」
「なんでだよ、悩む事ねえじゃねえか」
「いやあ、ダンスも面白そうだなあって思って」
「お前、踊れるのか?」
「まあ、一度見れば」
「……聞いた俺が間違っていた。っていうかお前の模倣って範囲広すぎだろ、どこまで適用できんだよ」
「さあ、どうなんだろ」
「適当だな、お前……。って違う。じゃあなにか、立花もダンスにするのか?」
「いや、涼太が面白そうっていうから俺も興味が出てきたというか」
「だって、ダンスって何か色々やるんだろ?」
「うん、創作ダンスもあるけど、社交ダンスもあるみたい。でも基本自由に選べるみたいだけど」
「社交ダンスって、こう、男女で組んでやるやつだよな」
「うん、そうそれ」
「お前、それしたいのか?」
「いや?したいっていうか、参考になるっていうか」
「参考?」
「ダンスのときの立ち振る舞いっていうの?モデルでもそうなんだけどさ、どうすればそのとき一番見られる位置で目立つことができるかってところとか、参考になるからこの機会に一度やってみるのもいいかなーって」
「……そうなのか」
「ふふ、別に女の子と踊りたいからってのじゃないからね」
「そんなん、お前が望まなくても女子がほっておかないだろ」
「そこなんだよなあ、別に女の子と踊るの嫌ってわけじゃないんだけど、あくまで勉強の一環で体験したいってとこがあるから、割と真剣なわけですよ、俺は」
「じゃあ涼太、俺とやるか?」
「お、おい、立花?」
「へーたと?」
「身長差で言えば、文句ないと思うんだが」
「あー、そうかも」
「え、ちょ、涼太」
「へーた、ちょっとこっち立って」
「?  ああ」
「はい、じゃあ俺と向き合って」
「おう」
「おい、お前ら」
「んで、手貸して。俺の腰に回して、支えるように、そうそうそんな感じ」
「こっちの手は?」
「俺とこっちで組むの。そう、軽く握る感じ」
「ん、こんなもんか」
「うん、で、背筋伸ばす」
「こうか?」
「へえ、へーた立ち方キレイ」
「お前に褒められると本当にそうなんだろうな」
「うん?俺嘘は言わないよ?」
「知ってる」
「で、このまま、組んだままで踊るわけだけど、……キチロー?」
「加藤?どうした」
「……お前らなあ!ここがどこだと!?」
「え?」
「教室」
「そうだよ!教室だよ!」
「なんでそれでキチローが怒るのか分かんないんだけど」
「お前らには分からないのか!周りの視線が!」
「ええ?……あれ」
「何で見られてるんだ?俺たち」
「当たり前だこの野郎!少しは考えろよ!んで離れろ!」
「……キチロー、もしかして」
「なんだよ!」
「キチローもやりたかったんでしょ?」
「はあっ!?」
「よし、分かった、へーた離して。んで、キチローこっち来て」
「ちょ、待て何だよいきなり手掴んで、って引っ張んなこらあっ!」
「キチロー、暴れないでよ。ほら、簡単だからさー、身長的にキチローは女の子役やってもらうけど」
「うおおおお離せ今直ぐにいいいいい!」
「加藤、頑張れ」
「生温い目で見てんな立花!涼太離せよこの馬鹿!」
「バカって言う方がバカなんスよー?」
「だああああああこのいい加減にしろおおおおおおお!!!」





「……吉見隊員、抜かりは無いか」
「はっ!万事ばっちりどんとこいです!一瞬たりとも見逃しておりません、樋口隊長!」
「よし!さっそく現像に行くぞ!佐藤隊員!」
「ガッテン!来週の広報の一面はこれにするわ!」
「いやあ、目の保養だわ〜」
「ほんとほんと」
「「「黄瀬君マジ天使」」」









20121206





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