That's cool, but if my friends ask where you are I'm gonna say



さて、本日は俺、高尾和成の誕生日である。
この年になってもまだ誕生日だから、と何か凝ったことをする訳でもなく。まあ、妹と母が選んでくれたっていうケーキを食べて、ささやかなプレゼントを貰って、父から素っ気なくもあったかいおめでとうの言葉を貰って、それでいつも通りに終わるはずの今日だったのだが。
今年は、ちょっと違うのだ。いつもの誕生日では無い。
何故って、それは、今年の俺には恋人がいるからなのだ。
それも二人。
あ、間違いのない様に言っておくけど、二股とかじゃないからな!
色々あって何度も話し合った結果、三人でお付き合いしましょうねってことになっただけだから!
そんな恋人の一人、緑間と俺は駅の改札前でもう一人の恋人を待っているところだ。
家族との誕生会はもう済ませてきたけど、まだそこまで遅くない時間。駅前は会社帰りのサラリーマンや、学生が溢れていて、そんな中でそんなに会話も無く二人で立っている。
別にケンカしてる訳じゃないんだけどね、なんかこう、会話が続かないときってあるじゃん。今がそんな感じで。まあ空気悪いわけでもないからほっといたんだけど。
そんでそれから暫くしたらさ、改札を縫う様に駆け抜けてこちらに近寄ってくる姿が目に入ったんだ。

「カズ君!緑間っち!」

伊達眼鏡をしていても分かる、キラキラとした笑顔に、俺は(多分、隣のむっつりメガネも)相好を崩した。

「待たせてごめんっス、これでも急いだんだけど……」

申し訳なさそうに謝る涼ちゃんに、俺はとびっきりの笑顔を向けた。

「大丈夫!そこまで待ってないし、真ちゃんもいて一人じゃなかったから。涼ちゃんこそお疲れ様」

俺の労いの言葉に、涼ちゃんは途端に笑顔を弾けさせた。

あー、やばい。なにこの子、超可愛い。こんな子が俺の恋人ってヤバイ。幸せで死ねる。

そんなことを考えていたら、隣の真ちゃんが涼ちゃんの頭を撫でていた。

「緑間っち、ふふ、くすぐったいっスよ」
「撫でてるだけだ」
「うん、へへ、ありがと」

なんかいつの間にか俺をほったらかしにして良い雰囲気作ってる真ちゃんにさり気無く脇腹に裏拳をきめておく。

「さて、それじゃ行こうか!」
「はいっス!」

涼ちゃんの手を取って握ると、ほんのり冷たかった手に俺の体温がじんわりと移っていくのが分かる。それが嬉しい。
振り返ると、溶けそうな笑顔の涼ちゃんがいて、その隣には普段のぶっちょう面を少しだけ和らげた真ちゃんがいて。
なんだこれ、俺超幸せじゃん?

三人で並んで手を繋ぐなんて、小学生のときくらいしかやってないことを、高校にもなってやることになるとは。人生何があるか分からないもんだなあ。

涼ちゃんおススメのケーキ屋さんで小さめのケーキを買って、真ちゃんの家に向かう。
今日は真ちゃんのお父さんもお母さんもお出かけだとかで家にいないから好きに使っていいって言われてたので、俺と涼ちゃんも気が楽だ。
大きな玄関を通りすぎて、広いリビングのこれまた広いテーブルに買ってきたケーキを広げる。
俺が先に家族の誕生会を済ませてきたのを考慮してくれた涼ちゃんセレクトの小さめのケーキは、どれも美味しそうだった。
お皿は真ちゃんに任せて、俺が紅茶を入れる。涼ちゃんが俺たちに選んでくれたケーキをお皿に載せてくれて、三人で向かい合った。

「それじゃ、改めまして、カズ君、お誕生日おめでとうっス!」

そう言って、涼ちゃんは俺にプレゼントを渡してくれた。

「うわあ、何だろ、開けていい?」

涼ちゃんの笑顔に了承と受け取って、俺は急いで、でもなるべく丁寧に袋を開ける。
中から出てきたのは、うわ、これ俺がこの前欲しいって言ってたCDじゃん!涼ちゃん覚えててくれたんだ!

「うっわ、嬉しい!ありがと涼ちゃん!」
「良かった。あのね、もう一枚の方は俺のオススメっス。この前聞いたら、カズ君が好きそうな感じがしたから選んでみたっス」

気に入ってくれたら嬉しい、と涼ちゃんがはにかんで笑うので、俺はもうなんかもう感動が振り切れたヤバかった。
なにこの子、マジ天使。

その隣で静かに紅茶を飲んでいた真ちゃんは、無言で俺たちのやり取りを眺めている。

「で?真ちゃんは?俺にプレゼントは無いのー?」

にやにや笑いながら聞いてやれば、真ちゃんはふん、と鼻を鳴らして俺を見た。

「これからやる」
「いや、これからって、ナニソレ」
「これからだ」

頭の上に疑問符を飛ばしまくっていた俺だったが、隣にいる涼ちゃんがもう、と真ちゃんに声を上げていた。

「そんなんじゃ、分からないっスよ、緑間っち」
「む」
「涼ちゃん、どういうこと?」

俺が疑問の声を上げると、途端に涼ちゃんは恥ずかしそうに頬を赤く染めた。
え?どういうこと?

「え、えっと、ね、カズ君。その、プレゼントのCD選んだのは俺なんだけど、緑間っちもお金折半で出してくれたから、これは俺たち二人からのプレゼントなんス」
「そうなんだ、真ちゃんサンキュー」
「ふん」
「え、えと、それでね、それだけじゃなくて、何か他にプレゼントあげたいなあって思ってたら、緑間っちが……」
「真ちゃんが?」
「……そ、その……」
「?」
顔を真っ赤にして俯いてしまった涼ちゃんに、俺が手を伸ばそうとすると、その前に真ちゃんが涼ちゃんの身体を後ろから抱き締めた。

「わ、ちょ、緑間っち、」
「高尾」

涼ちゃんの声を無視して真ちゃんがこちらを向く。息を飲む様な迫力を持った目がこちらを見ていた。

「俺たち二人がプレゼントだ」
「……は?」
「だから、俺たち二人でお前に奉仕してやる」

……ちょ、ちょっと待ってください。
余りの展開に頭がついていかない。
真ちゃん何言ってんのよ。

そんな風に思っていられたのも、最初の内だけだった。

「ん、ふ、ぁ」

涼ちゃんの可愛い口に真ちゃんがキスしている。唇の隙間を互いの舌が行き来しているのがばっちり見えてしまって、正直な俺は思わず熱が上がった。
……しょうがないじゃん!俺だって健全な男子高校生ですから!

「……ん、カ、カズ君……」

真ちゃんにキスされて半分以上とろけちゃった瞳でこちらに手を伸ばす涼ちゃんは、はっきり言って目の毒以外に言い様が無い。
ごくり、と飲み込んだ唾の音が妙に頭に響いている。

「プレゼント、受け取って?」

ねえ、だからさ。
こんな風に言われちゃあ、受け取らないわけにはいかないって、思うでしょ?皆さん。

「喜んで」

理性ギリギリでそれだけをなんとか言い切った俺は、嬉しそうに口を緩ませた涼ちゃんに特別甘いキスを贈る為に顔を傾けていった。
頭の隅で、テーブルに載ったまま忘れ去られているケーキの存在が少しだけ浮かんだけれど、涼ちゃんのキレイな肌に手を伸ばしながら、真ちゃんのテーピングされてない綺麗な手を握りながら、後でちゃんと頂くから、今は先にこっちを食べさせてね?と胸の中で謝った俺でした。








20121121
高尾君、お誕生日おめでとう!






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