情意投合



「なあ、立花」
「なんだ?」
「昨日の課題だけどさ」
「英語のか?」
「そーそー、例文作ってこいってやつ。できた?」
「まあ、とりあえずは。後で涼太に見てもらおうと思っているが」
「だよなあ、俺もなんだけどさあ。……涼太まだ帰ってこれないのか?」
「今日は午前に仕事が急に入って朝練の途中で抜けてたからな」
「いきなり体育館にアイツのマネージャーさんが走り込んできたときは驚いたわ」
「海外でも有名なカメラマンが、用意されてたモデルが気に入らないってんで、いきなり涼太指名したらしい」
「……アイツ、すげーんだな」
「そうだな」
「すげー奴のはずなのに、普段の涼太見てると、全然そんな風に見えないのって、なんでなんだろうな」
「それは、あれじゃないのか」
「あれってなんだよ?」
「モデルの仕事をしている涼太は、まあ言ってみれば余所行きだろう」
「? ああ」
「着飾って、自分を装って、人前に立つ。だからじゃないのか」
「だから何が?」
「俺たちや先輩たちには、そうやって着飾ることも、偽ることもしなくていいって涼太は分かってやっているってことだろう。ここにいる涼太はモデルの涼太じゃなくて、海常高校の黄瀬涼太なんだから」
「……なあ、立花」
「何だ」
「涼太帰ってきて、そんで昼休みに間に合ったら、三人でバスケしねえ?」
「そうだな」
「んでさ、英語の課題のことなんだけどさー」





「たーだいまっ!キチロー、へーた!」
「お帰り、涼太。メシは?」
「車の中で食べたから平気。あれ、二人は?」
「俺たちももう食べた。だから行くぞ」
「へ?行くってどこへ」
「決まってんだろ、体育館だ」
「何で?」
「午後の退屈な授業を前に身体を動かしたいと思いませんか、涼太君」
「それはそれは、素晴らしい考えですね、キチロー君」
「そうと決まったら善は急げ、だ」
「よっしゃ!俺一番乗りーっ!」
「早ええ!無駄に俊足生かすんじゃねえよ、涼太あ!」
「加藤、置いてくぞ」
「立花もな!とっととスタートしてんじゃねえ!」
「ビリは後でジュース奢るってのはどう?」
「いいな、それ」
「って、それ限りなく俺じゃねえか!勝手に決めんなーっ!」
「キチロー、早くおいでー」
「手ぇ振るな!」
「加藤、頑張れ」
「応援すんな!切なくなるわ!」





「……なー、小堀。今、廊下走り去っていったのって、」
「うちの一年坊主だなあ」
「笠松―、いいのか?」
「放課後、シメるからいい」
「あ、ああ、そう。(黄瀬、加藤、立花、ご愁傷様……)」







20121003





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -