夢の続きを





ぼんやりとした瞳がこちらを見上げている。ラブマシーンは右手を静かに持ち上げて、今にも目が閉じそうな彼の髪を殊更ゆっくりと梳いた。

「眠いのか?」

そう、尋ねれば、

「ねむく、ないです、よ」

と、分かりやすい嘘が返ってくる。
ラブマシーンは込み上げる笑いを何とか耐えて、髪を梳く右手はそのままに、左手でケンジの目元をさらりと撫でた。

「目が、くっ付きそうだ」

指が触れた感触に気付いたケンジが、目を擦ろうとするのをやんわりと止めて、ラブマシーンはケンジの瞼に軽く触れた。

「そこに、ゆびをおかれると、ボク、目があけられない、です」

「そうだな」

「……いじわるしないで」

「違うぞ」

くあ、とケンジが欠伸をした。目元に滲んだ涙をラブマシーンは舐めとる。

「ケンジの味だな」

「……もう、なにいってるの」

「本当の事を言ったまでだが?」

「言わなくていいことも、あるんです、よ」

とろりと溶ける様な甘い声が耳に心地よい。このまま何時までも聞いていたいとラブマシーンは思ったが、それより優先すべき事項を選択した。

「……ケンジ、もう寝よう」

「……まだ、」

「また明日にしよう」

「だって、」

何とか頭を持ち上げようとするケンジにラブマシーンは目元が緩んだ。

「……我儘だな、ケンジ」

そんなことない、それを言うならアナタの方だ、といつものケンジだったら反論しただろう。だが、もう言葉は返って来なかった。
自分の膝元で小さい寝息を立て始めたケンジの小さい肩が呼吸の度に上下に揺れるのを、ラブマシーンは見詰めた。

「お前にとってのこれからの時が、何よりの幸いであるように」

小声で呟いたラブマシーンは、ケンジの耳にキスを落とした。

「……よい夢を」



出来ればその夢の中に、ワタシがいる事を


胸の内だけで呟いた言葉の答えの様に、ケンジの寝顔が微笑んだ。








………………
110516

…春眠暁を覚えず。
眠い眠いの、ころころさせて、なラブケンでした。お粗末。

 









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