耐えられないものなんてないし、絶えることのないものもきっとある この世で本当に大切なもの、 君の秘密を、僕だけに教えて欲しいんだ 「それで?今日はどうしたんだ」 些か憮然とした表情のカズマにラブマシーンが淡々と答えた。 「ケンジが、お前たちの顔を見たいと言った」 「お前、相変わらずだな」 思わず、と言った表情で軽く息を吐くカズマにラブマシーンの頭が傾く。 「…何がだ?」 「お前の世界の中心は、ケンジさんなんだな、ってことだよ」 「……世界の中心…」 「お前の行動、言動、全ての事象において、優先されるべき存在だ」 なあ、ラブマシーン、僕はそんなお前が時々すごく羨ましいと思う 「何故、お前がそんな事を言うんだ」 本人も意識していないようなその零れた言葉に驚いたのは、ラブマシーンよりも寧ろカズマの方であったのだろう。 「…お前も、そうだな、いつかそう思うようになる時が来るかもしれない」 ばつが悪そうに話すカズマにラブマシーンはその名を呼んだ。 「カズマ?」 「好き、だけじゃ足りないんだ」 そう言ってカズマが視線を向けた先をラブマシーンも追いかけた。そこには楽しそうに笑い合う二人の姿がある。 「…欲しい、そう思うんだよ」 ひどく切なそうに細められた視線の意味を、自分に正確に把握出来ただろうか。 何か言葉を伝えようとしても喉を振るわす事がもどかしく、何かが邪魔をして出てこなかった。 「傍に、…傍にいてくれるだけで良かった筈なのに、」 「もう、それだけじゃ無理なんだ」 「…止められない」 「なあ、お前は、」 ぽつりぽつりと、想いを切れ切れに話すカズマを、ラブマシーンは見ているだけで言葉を見つけられない。 「あの人を、見て、」 「想って、」 「それだけで、」 「…それだけでも、」 ああ、そうだな、…辛いな 胸の中に落ちた言葉は、そのまま自分にすぽりと当て嵌まった。 「きっと、ワタシもお前と同じだ」 「ケンジを想うだけでそれだけで良かったのはもう過去なのだろう」 「…自分の中のどうしても譲れない所に、最後の扉がある」 「その鍵を、ケンジに渡してしまっているんだ」 「ワタシでは、開けない」 ラブマシーンの言葉にカズマの目が大きく開いた。 「…どうしようもない、な」 「ああ、どうしようもないんだ」 「馬鹿だな」 「馬鹿、なのか?」 「馬鹿だよ、お前も、…僕も」 じわりと滲むような苦笑を見せて、カズマは頭の後ろに手を置いた。その時向こうから自分達を呼ぶ声が聴こえてきた。 軽く手を上げる事で返事を返して二人は立ち上がった。 「まあ、まだ諦めてなんていないけれど、な?」 「…それはお互い様だ」 「賭けようか、ラブマシーン」 カズマが自分の名前を呼ぶのは珍しい。立ち止まって視線を合わせると、そこには、 「どちらが先に、相手を落とせるか」 自分が良く見る、いつもの不敵な王がいた。 差し出された拳に自分のそれを突き合わせ、そうして二人の二度目の戦の狼煙が上がる。 「まあ、負け戦なんてしない主義だけれどな?」 「…よく言う」 「お前に言われたくないね」 …………… だって、キングですから |