私ではない誰か他の人と






例えば、自分よりも遥かに相応しい人があの人に出来たのならば、





『お前はまた、そういう事を考えるんだなあ』
諦めとも呆れともとれるようなそんな溜息と一緒に侘助が息を吐き出す。
「考えない日は、ないですよ」
対したケンジは普段通りの澄ました顔でそんな侘助に対峙していた。
多分、恐らく、これからも自分が彼の傍にいるならばずっと考えるだろう。
「ボクなんかよりもあの人に似合う素敵な方はそれこそ星の数ほどいるでしょうし、」
なにより、
「あの人がそれを望むのならば、ボクは、」
『潔く身を引くって?』
半分からかいのような軽い口調で侘助が言った言葉にケンジは丸い目を更に丸くして答えた。
「…そういう風には考えた事無かったです」
『じゃあ、お前はどうするんだ?』
「そうですね、」
と、まるで明日の天気の話でもするような気安さでケンジが落とした言葉に侘助は苦笑した。

「あの人に、全部終わらせてもらいます」















『お前、随分と愛されてやがるんだな』
「何の事だ?」
『お前の大事なアイツの事だよ』
「ケンジ、ここに来たのか」
『俺が呼んだ』
「検査はまだ先の筈だが?」
『ちょっと試してみたかったんだよ』
「ケンジに?何を」
『怖い顔するな、一つ質問しただけだ』
「…それはワタシが聞いても構わない事か?」
『さあ?俺にもそれは分かりかねる』
「…それで、」
『ああ、そうだな、お前ならなんて答える?』



「…それは有り得ない」
『何が有り得ないんだ?』
「ワタシがケンジ以外を望む事は無い」
『言いきるなあ、お前』
「それこそ愚問だ」
『アイツはそう思っていないようだが?』
「…ケンジの考えを否定する事はワタシには出来ない。だが、」
『…だが?』
「もしもケンジがワタシから離れたいと願う時は、ワタシは、」

「ケンジに、全ての終わりを望むのだろう」



『似た物同士だよな、お前らは本当に』
「…そうなのか?」
『さあ?俺がそう思うだけだ』
「それならいい」
『…恋愛とは二人で愚かになることだ…か』
「侘助?」
『こっちの話だ』











……………
by Paul Valéry
彼の本名長いです。









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