静かな日々の階段を





「お前に問題を出そう、ラブマシーン」

それは人類にとっての永遠のテーマでもある。

「お前にとっての、」

愛とは、なんだ?



その答えを探している最中に君に出逢った。








「…久しく忘れていた」
そういえばそんな事を生みの親から言われた事があった。眼を閉じれば思い出せる、あの時の侘助の顔。まるで挑発するようにその難題を押し付けてきた。自分の名前にもあるその言葉の意味を答えろと。
あれから時間が経った今でも、侘助のその人の食えない態度は変わらない。それでも最近は何処かその纏う雰囲気に変化があったように思う。彼は変わったのだろう。人は変わりゆく生き物だ。
では、自分は?何か変わったか?



「ラブマシーンさん、」
思考の海に浸かっていて反応が少し遅れた。控え目な声で呼ばれて振りかえると、ケンジが隣に立って自分を見上げていた。
「ケンジ、どうした」
聞くと彼はただ笑った。
「いいえ、ただ、何か難しい顔をしていたから、何か悩みでもあるのかと思っただけです」
勘違いだったらごめんなさい、そう言って彼は苦笑した。


『お前にとっての、愛とは、なんだ?』


不意に侘助の声が再生された。
今、自分は彼を見て何を想った?

この時まるで霧が晴れる様に、頭の中が鮮明になった。

「…侘助に以前出された問題を考えていた」
「侘助さんに?…きっと難しい問題なんでしょうね」
「ああ、難しかった」

そう、自分一人ではきっと永遠に解けなかった。

「…解けたんですか?」
「多分、」

彼を抱き上げて自分の目線に合わせる。腕の中のこの存在が自分をこの世界に繋ぎとめた。彼の手が自分の腕にそっと触れる。その感触が奇跡のように思える。
彼が、

「きっと、これが答えだ」
そう言って思う存分彼を抱きしめた。苦しいと腕を叩くその音も自分を止める要素にならなかった。
「ラブマシーンさん、」
彼が自分の名を呼ぶ。
彼が笑う。
彼に触れる。

(今度侘助に会う時はケンジを連れていこう)

そうして答えるのだ。あの時の解答を。












……………
ケンジからラブマシーンへの感情は『恋』。
ラブマシーンからケンジへの感情は『愛』。
この微妙な差があるから、彼らの中で上手く繋がらないところがあるんです。








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