Bis daβ der Tod euch scheidet.






「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」



「え?」



彼の口から淀みなく流れたそれは、ある場所で神聖な誓いをする際に牧師の口から紡がれる言葉だった。











「一体どうしたんです?何処でそんな言葉を聞いたんですか?」
彼が今までに見た事の無いくらい真剣な眼差しで自分を見ているから、ケンジは胸の辺りがざわめく様に感じた。
「ケンジ、」
彼の手が自分に伸ばされる。ケンジにはこの時、その手を掴むことが何故かとんでもなく困難な事のように思えた。
「ラブマシーンさん…?」
「誓って欲しい」
そう言って彼は自分に手を差し出してそのまま動かなくなった。その瞳だけは決して逸らすまいと自分を見つめながら。

(誓う…って、さっきの、誓いの言葉を?)

『その健やかなるときも―』

(どうして、)

きっと、また侘助あたりにからかわれているのだろうと思う。彼は自分の知らない知識を取り入れる事に関しては貧欲だから。だからきっと今回のこれもその一環の一つにすぎないのだろう。

(なのに、どうして、)

どうして、こんなに泣きたくなるの

涙が零れる事を止める事が出来なかった。
きっと誰もが憧れるその光景の一端でも、今自分は経験しているのだから。それが例えお遊びであったとしても。

(馬鹿、だなあ、)

それでも嬉しいと感じてしまう自分はきっと、

「…はい」

彼を、心から、

「誓います」












「…ケンジ、」
「はい」
「どうして泣くんだ?」
「…どうしてでしょうね」
「悲しいのか」
「悲しいから涙が出る訳ではないんですよ。もっと色々な理由でも涙は流れるんです」
「…今は?」
「今は、そうですね、胸がいたいから」
「痛い?」
「いたい、ですよ」
「侘助に…!」
「違います。侘助さんに診ていただいても、治る事のないものですから」
「…治らないのか」
「はい、きっと、ずっと」
「ケンジ、」
「なんですか?」
「誓う」
「ラブマシーンさん?」
「誓う」
「………もう、仕方がないですね」


涙、もっと止まらなくなるじゃないですか











……………
Bis daβ der Tod euch scheidet. [ 死が汝等を別つまで. ]








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