『蓮ちゃん』
「………名前」

私が今押し倒しているのは、同じ部活の仲間で同級生で同じクラスで学校ではあまり知られてないけれど実は幼なじみの柳蓮二くん。あ、テニス部の皆は知っていてまた「じゃれあってんの?」という程度の反応だ…真田くん以外は。


「毎度毎度俺を押し倒すのは止めてくれないか」
『あ、ごめんつい』
「俺は毎度毎度“つい”という理由で女子に押し倒されているのか、最悪だな」
『蓮ちゃん、そんなことで拗ねないでよ』
「だいたいなその蓮ちゃんという呼び名もそろそろ止めてくれないか、俺はもうそんな呼び名で呼ばれるほど子どもじゃない」
『ぐえっ』

グワシっと片手で私の頬を握る。その為私はいまアヒルさんみたい。
そんなに力いれることないだろうってくらい力入れているよ、この人。ドSだね、本当に。

「かわいいじゃないっすか、“蓮ちゃん”って」
『ねー』

赤也くんが同意してくれたから蓮ちゃんから退きながらそれに頷いているとムクリと起き上がった蓮ちゃんはギロリと赤也くんを睨み付けた。

いつも蓮ちゃんは目が開いてるのか開いてないのか細い糸目なのかわからないがほんのたまに開く、その名も開眼である。主にお怒りまたは不機嫌な時に多い。

「ほぉ、ならば俺はお前が家で呼ばれている“あっくん”と呼ぶことにしよう」
「ちょ、なんで知って!?」
「かわいいから良いだろう…あっくん」
「ぎゃあああ」

蓮ちゃんはすごく人をいじめるのが大好きです。

『そうじゃなくて、蓮ちゃん!』
「なんだ」
『ジャンケンの勝負!!私が勝ったら三●の声マネ!!』
「……………」
『駄目だよ!それを条件にテニス部のマネージャーなったんだかんね!譲らないよ!』


そう、私がテニス部に入ったのは蓮ちゃんに頼まれたから。
「頼む…部員に全く興味のないお前にしか頼めないんだ。条件と…して本当ならしたくないんだが、前々から嫌々やらされているゲームキャラの声マネをやろう。一応言っておくが俺にお前がジャンケン勝負で勝ったらだからな」と。

はっきり言うと好きな人に頼まれたら条件なくてもやったんだけども。せっかくなので!

「チッ」
『大きな音で舌打ちしたって駄目だかんね』
「仕方ない、やってやろう」
『おし!』

今まで黙ったり違うことを言って逃げていた蓮ちゃんがとうとうおれた。

「おい、あっくん。審判しろ」
『よろしくあっくん』
「止めてくださいよ、それ!!」

あっくんって呼んだら顔真っ赤にして半泣きの赤也くん。まじかわいいな。

「後だしとか駄目っすよ、んじゃ」
『じゃん』
「けん」
『「ぽん」』
「あいこっす」
「あいこで」
『しょっ!』
「またあいこっす」

ジャンケン勝負開始してからずっとあいこが続く。蓮ちゃんはデータ持ってるからいつものごとくアッサリ負けるもんかと思いきや、案外すぐ負けると思ったのになかなか続く。

なにこれ、データ打ち破ったり?

「これで終わりにしよう」
『うん』
『「じゃんけんぽん」』

私はぐー、蓮ちゃんはちょき
なんと私の勝ち!


『勝ったー!』
「……………」

喜ぶ私と自分のちょきを眺めうつむく蓮ちゃん。
はぁ、とため息をついたと思えば急に私の手首あたりを掴んでグイグイと引っ張る。

『うおぉぅ!?』
「柳先輩何処行くんすか!?」
「抜ける、と精市に伝えておいてくれ」

そう赤也くんに言って私の手首を掴んだまま、部室をでて校舎の方にずんずん歩いていく。

『蓮ちゃん?』
「……………」名前呼んでも答えもしなけりゃ振り向きもしない。私はいったい何処へ連れてかれているんやら。

あれれ、これは何だか見覚えのある道だな。当たり前か毎日通ってる学校内だし。

確かこの道は生徒会室……………は?

ガラガラと生徒会室の戸を開けたと思ったらピシャッと閉めた。ついでにガチャンとか言う音しなかったか!?

「……………」
『蓮ちゃん?ってうぎゃああああああ』

知らない間に開眼してた蓮ちゃんに首をかしげたら生徒会室にあるふわふわソファーに向かってドンと押された。

かと思えば乗られた。

『重いぃぃぃぃぃぃ』
「名前、特別だ。今日は全部耳元でいってやる」
『な、何だと!?』
「嬉しいだろう」
『や、やめてけろ!?死ぬ、絶対に死んでしまう!!』
「ふーん、なんでだ?」


何故かと聞かれて答えてしまうと色々困るんだよ。だって蓮ちゃんと声が似てるから三●が好きだなんて、ある意味告白になるじゃまいか!?
てかどうせそれを知ってるから言わせようとしてるんだ。


「時間ならたっぷりあるぞ…部活が終わるまでな」
『わ、私は言わないぞ』
「クズが、だったか?」
『にぎゃぁぁああああああああああああああ』


それから私は、30分ほど耳元で囁かれ続けて骨抜きにされました。

「――だ」
『ぴぎゃぁあああああああ』


一度好きだと聞こえた気がしたのは私の妄想でしょうか。今、ものすごいドヤ顔している蓮ちゃんには聞こうとは思いません。


(参ったか)
(スゴイデフネ)
(俺を誰だと思っている)
(参謀、達人、またの名をデータ集めといいながら人をストーキングするへんじn)
バシッ
(殴るぞ)
(事後報告はんたーい!!)


END



― ― ― ― ―― ― 
青葉さん、相互ありがとうございます!全く甘くならなかったうえ無駄に長くなってしまいすみません!!
青葉さんのみお持ち帰り可、書き直しも可ですので何時でも言ってください!

20110930  野宮奏




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