すべてが終わってしまった音がした。

@8月拍手log


私には幼なじみがいる。幼なじみの名前は柳蓮二。

でもその幼なじみは私とは何だか住む世界が違っている。
カッコイイし皆に頼られる人気者。
それに比べて私は可愛くなんてないし、クラスでは浮いてるし。

そんな私が蓮二を好きだなんて誰かに知られたらきっと笑われてしまう。

お前なんかがって、きっと言われてしまう。


ある日のこと、ソフトテニス部に入ってる私は先輩に頼まれて倉庫にボールを取りに行ったときのことだ。


倉庫の前に、蓮二と知らない女の子がいた。
女の子は頬を赤らめていて、ああ告白かと理解した。

私からみた蓮二は後ろ姿でどんな顔をしているのかわからないけど、何だか心臓が痛くなった。


「あの、私…柳先輩のこと…好きなんです」
「そうか…ありがとう」


優しく女の子に返事をする蓮二の声に頭が殴られたような感覚に襲われた。

こんなところに居たらダメだ。そう思って音を立てないように立ち去った。

蓮二に彼女ができる。そんなの嫌だ。
私がそんなこと思っていいのかはわからないけど、すごく嫌だった。

――――蓮二が少し皆に嫌われればいいんだ。



なんでこんなことを思ったのか、自分でもわからない。

でも気が付いたら私はとんでもないことをしてしまっていた。


「なぁ、知ってるか。あの参謀こと柳はむっつりなんだと」
「えー!!」
「しかもギャルゲーとかもやってるらしいぜ」


ちょっと流しただけの噂がここまで広がってしまうとは学校は恐ろしいところだ。
なんて嘘八百な噂を流した私が言えることではないけど。

「言われてみればそんな気もするよね。ギャルゲーはびっくりだけど」
「じゃあいつも読んでいる小説も実はすごいやつなんじゃない?」
「えー、マジで!?うわぁ」

しかも噂がさらにありもしない噂を呼んでいる。

ああ、学校って本当に怖いところだ。

噂は1日もしないうちにどんどん広がって、学校中蓮二の噂で持ちきりになった。

ごめんなさい、蓮二。


お昼休み、教室の扉がバァンっと派手な音を立てて開いた。

お弁当を教室で一人食べていた私はびっくりして扉の方を見た。
そして直ぐに後悔する。
勢いよく開いたそこには、眉間に深いシワを刻み込みすごく不機嫌そうなオーラを出した私の幼なじみさんが立っていた。

キョロキョロと教室の中を見回す蓮二はまるで怒髪衝天。
かなりのお怒りだ。様子から私が広めたんだとわかっているみたい。
これは見つかったら処刑決定だ。

今日はありがたいことに私の教室には他クラスの人が集まっていて混雑している。

とりあえず、お弁当に蓋をして窓から逃げてしまおう。

お弁当に蓋をして、窓に移動し始めたとき

「おー噂のご本人じゃんか、どうしたんだよぃ?」
「丸井、みょうじはいるか…」
「みょうじってあの大人しい奴?たしか、そこに…あれいねぇ」
「逃げたか…」

運悪く丸井くんが蓮二に話しかける。ヤバイぞ、見つかる。
急いで掃除用具入れと窓の横にしゃがみこむ。

頼みます、神様見捨てないで!
なんて祈ってたら、いた。と声がして見上げるとそこにはニカッと笑う丸井くんがいた。

「柳ー!ここにしゃがんでるぞ」
『のーーーーー!!』

急いで、窓によじ登って外に飛び降りた。
教室が一階でよかった。

そして急いで走って逃げた。

さすがの蓮二も上履きで外を走っては来ないだろう!

そう思ってチラリと振り返ると目をカッと開いた蓮二がものすごい速さで追いかけてきていらしゃった。

てか怖いわ
何故開眼したまま追いかけてきた!?

無茶苦茶怒ってるんですね。ごめんなさい。
とりあえず捕まったら殺される。いやそれはないから半殺しか。

捕まるわけにはいかない、逃げ切ってみせる。

それからどれくらい逃げ回っただろう。やっぱり男と女の体力には差があるものだ。いくら運動部でももうつかれた。

でも捕まりたくない、だから走る。
というより蓮二は私より足が速いはずのになんで追いつかない。

ちらっと後ろを見ると全く疲れた顔なんかせず走って追いかけて来ている。

わざとか。私が疲れたところを捕まえる気か。
そんなことを考えながら走っていたら足が絡まって転んだ。

『いっ!!』
「捕まえたぞ」

起き上がったとき既に時遅し、恐ろしいほど綺麗な笑顔で蓮二が笑う。
そして私のブラウスの襟首を掴み引きずって移動を始める。

ああ、殺される。








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