■ 3

最近、自分の身近な人が訳も分からないような行方不明事件が多いと感じる。大嫌いだった直属の上司が謎の失踪を遂げたり、仲が良かった友人が突然の自殺を遂げたりと其れはもういろいろと。
上司のことは色々を清々するところがあった為気にはしなかったが、友人を亡くしたことは私の心に深く傷をつけた。友人の葬儀に行った際、友人の両親から色々と話を聞いた。自殺した友人は遺書などは残していなく、自殺する前日まで笑顔で過ごしていたという。いきなりの自殺に両親も心がついていけてないとのこと。
1番の友人を亡くしたことにより、私の心はズタボロである。
葬儀後、私は連日眠れていないこともあり色々なことが重なり体調を崩した。顔色が良くない私を見て白黒無常は私の看病をしてくれた。
しかし、友人を亡くした傷は癒えず、夜になると二人の前で涙を流す日々が続いた。


「仲良しだったのに…、どうして…」


呟きながら涙を流すなまえ。そのなまえを見て謝必安は自分の胸へとなまえを誘い込む。それと同時に范無咎はなまえの涙を冷たい指先ですくう。


「可哀想ななまえさん。大丈夫です、貴女には私たちがいますよ」
「なまえ、どうか涙を止めてくれ。お前の涙は私たちには毒だ」
「小学校から一緒だったの…ううっ…」
「よしよし、大丈夫ですよなまえさん。私たちが一緒にいます。今日も眠れないのであれば膝枕をして差し上げましょう。貴女が望めば私たちは何でもしますよ」


そう話すや否や、謝必安は自分の膝になまえの頭をのせ、顔が見えるようになまえを仰向けにさせる。白と黒の男の目が涙を流しているなまえを愛おしそうに見つめる。その瞳は三日月のように円を描いており、瞳の色は紫と黄色に光っている。


「なまえ、私たちと共に行こう。此処にいてはお前が壊れてしまう」
「無咎の言う通りです。この世界は貴女にとって毒そのもの。私たちと一緒に行きましょうなまえさん」


頷いてはいけないのに何故か勝手に二人の言葉に頷いている自分がいた。
駄目、駄目だよ。私の世界は此処だもん。貴方達とは一緒に行けない。

頭の中では否定しているなまえだか、体が勝手に二人の手を取る。両手を引かれたなまえはそのまま、二人に抱き着くような形になる。なまえを白黒無常は愛おしそうに抱きしめる。


「そろそろなまえさんの意識はこちらの世界からなくなります。でも心配しないでください。あちらの世界でも私たちは貴女を愛すことを誓いましょう」
「あちらの世界にはお前が恐がるものは何もない。私たちと共に永遠の時を生きよう」


否定したい。いやだと言いたい…。けど、口が動かない…。頭が回らない…。怠さしかない。


「嗚呼、無理に動かない方がいいですよなまえさん。此処一か月ほど貴女の魂をこの傘で吸魂していましたから。今、身体の倦怠感が凄まじいでしょう?」
「なまえの魂はとても美味だったぞ。もう少し食したかったが、食べ過ぎるとなまえが死んでしまうからな」
「さあ、私たちと行きましょう。荘園の主には話はついています」


二人の足元から白黒の水溜まりができる。二人はドロドロに溶けていく。そして、そのどろどろの液体に私の足が腰が頭が引っ張られていく。嗚呼、誰か助けて。どこから間違っていたのだろう。二人を匿ったところからだろうか。いや、そもそもこの歪なゲームを始めてしまってからだろうか。

徐々になまえの身体が水溜まりに溶けていく。なまえの全てが水溜まりに飲み込まれたあと、そこは何もなかったかのように静寂になる。その静寂の中、なまえのスマホから女のすすり泣く声と男のあざ笑う声が部屋中に響き渡った。


- end -

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