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「こんにちは、なまえさん」


一か月前の仕事帰り、自宅に帰宅すると自分のハマっているゲームキャラが自分の部屋にいたなんて小説じみた現象が起こっていた。自室にいた白が特徴的な彼は勉強机の傍にある椅子に足を組みながら腰を掛けていた。


「謝必安、なまえが混乱しているぞ」
「それもそうでしょう無咎。生きている世界がまるで違うのですから」


白い彼の隣にはゲーム内では一緒に顔を合わせることができない黒い彼が立っていた。双子のように似ている彼らは兄弟でもなく親友だという設定である。しかし今はそんなことはどうでもいい。問題は…


「なんで…ゲームのキャラクターが…」


彼らはゲームのキャラクターである。其の為、端末内で姿を見ることはあれど自分のいる世界で会うことは絶対にないはず。


「ふふっ、私たちも嬉しいですよ。いつもは端末の中でしか顔を見ることができませんでしたがこうして貴女に会うことができて」
「荘園にいた私たちが何故かお前の部屋にいた。帰り方もわからないからよろしく頼むぞ」
「申し遅れました、改めて紹介を。私は謝必安です」
「私は范無咎だ。好きに読んでくれ」
「えっ…えっと…なまえです。よろしくお願いします」


あっさりと二人の雰囲気に呑まれてしまった…。


こうして二人がこの世界にやってきたのが、凡そ一か月前。
その後、端末内のゲーム「第五人格」を確認したが白黒無常だけが私の端末から消えていた。サバイバーをすると他のプレイヤーアカウントでは白黒無常を使用している人がちらほら見られた為、私のアカウントだけがないことに気付く。そのことを白無常である謝必安さんに話すと「それは私たちがこちらの世界に居るのですから当然のことです」と言われる始末。また、ゲーム内で男性キャラのサバイバー(占い師とか納棺師とか)を使おうとすると「私たちがいるのにお前は易々と他の男を使うのか?」と少し怒り気味に無咎さんから威嚇された。もうどうすればいいのか。
結局、謝必安さんと無咎さんに土下座して、仕方ない程度にサバイバーは占師と女性サバイバー、ハンターはリッパ―と女性ハンターを使用することを赦された。ハンターでは、写真家であるジョゼフも結構使用していたこともあり、謝必安さんにジョゼフは駄目なのか聴いたら「なんでジョゼフさんなんですか?あんな性格悪い男の何処がいいんですか」と優男らしからぬ強面の表情で顔を近づけられたので圧に負けて私は「すみません」としか言えなかった。それを見て謝必安さんは「分かってくれたのならいいのです」といつもの優男フェイスに戻る。
ジョゼフはやっぱり性格悪いのか。


……。

いや、先ずこのお二人は端末内に戻って頂きたい。早急に。



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