■ 或る日の日常

*ゲーム外の話
*サバイバーとハンターゲーム外は仲良し
*サバイバー館とハンター館が行き来自由



今日はゲームの予定がない。だから今、私はエマと共に庭の花たちに水やりを行っている。

アンティークの彫刻が綺麗なじょうろを持ち、なまえとエマは笑顔で話しながらバラやパンジーなどに水やりを行う。この庭園は荘園の主が用意したものであったが、最初は雑草が生い茂っていた。しかし、エマを中心に土の入れ替え季節に合った花を植えるなどして今や御伽話に出てきそうなほどの庭園に生まれ変わった。


「本当にエマは凄いよ。あの荒れ放題だった庭園を此処まで直したんだから」
「エマだけの力だったら此処まで出来なかったの。なまえや他の皆が手伝ってくれたからなの!」
「私はただ水やりしていただけだよ?」
「それでも助かるの!水やりをしたい人余りいないから!」
「ありがとっ」
「こちらこそありがとなの!」


今の季節は日本でいうと梅雨に値する。庭園には薔薇と共に紫陽花の花も淡い色を放ちながら咲き誇っていた。この紫陽花は美智子さんが荘園の主に頼んで植えてもらったものだ。紫陽花の花を見るたびに日本で過ごしていたころのことを思い出す。


「紫陽花、綺麗だね」
「美智子さんが頼んだものなの。エマが住んでいた場所では見たことなかったの。なまえは美智子さんと同じ国出身だったけ?」
「そうだよ。でも地域も生きた時代も違うけどね」
「エマもいつか日本に行ってみたいの。日本だけの植物とかも見てみたいの!」
「うん、いつか行こう!その時は案内するよ」


エマとなまえが話しているとバラ園の方から黒い傘を持った高頭身の男性が現れる。白が中心の服を着たその男は、なまえを見つけるとなまえのところへと駆け寄ってきた。


「こんにちは」
「こんにちは謝必安さん」
「こんにちわなの」


優雅に謝必安は挨拶をすると、二人にむけて話しかける。


「ちょうど美味しいお菓子が手に入ってので良かったらどうですか?」


お茶会のお誘いの様だ。その誘いになまえは顔を明るくさせながら頷く。


「是非参加したいです!」
「そうですか。エマさんはどうしますか?」
「私は今からゲームがあるから行けないなの。なまえと楽しんでなの」
「左様ですか。では、今回はなまえと楽しみたいと思います」
「白無常さん。奥の方のテラス、エマおすすめの場所なの。そこで楽しんでなの!」
「おすすめの場所ですか…。では今日はそちらで楽しみたいと思います」
「じゃあ、エマは試合頑張ってくるの!」
「今日のハンターさんは誰?」
「リッパ―さんなの…。頑張るの…」
「がっ…頑張ってね、エマ」


手を振りながら、エマは待機場所へと向かう。エマが去り、なまえと謝必安は二人きりとなった。なまえの身長は謝必安の腰の高さ程しかない為、話すときは必然的に上を向く。


「謝必安さん、范無咎さん会いたかったです」
「ふふ、可笑しなことを言いますねなまえ。昨日もあったではありませんか」
「それでもです。ダメですか?」
「いいえ…。とても嬉しいですよ」


謝必安は少し頬を赤くしながらなまえの身体を愛おしそうに強く抱きしめる。それになまえは返すように謝必安の腰に両手を巻き付ける。


「なまえはとても暖かくて、良い匂いがしますね」
「そうですか?謝必安さんもいい匂いしますよ?」
「私は一度死んだ者です。なまえのこの暖かい体温は私たちにはありません」
「それは…」


謝必安と范無咎が死者であることはなまえも重々承知だった為、言葉に戸惑ってしまう。それを見て、謝必安は少し俯きながら「すみません、貴女を困らせるつもりはなかったのです」と悲しそうに笑顔を見せた。


「さて、美味しいお菓子を食べながらお話をしましょう。エマさんが進めた庭園で。ではお手をどうぞ、小姐」


なまえの前で手を胸に当て敬礼をし、謝必安は傘の持たない手でなまえの手を取る。


「無咎もなまえと話しをしたいと強請ってます」
「范無咎さんが?」
「はい。無咎も貴女のことを大切に思っていますから」
「前から思っていましたが、どうやって二人は思いを分かち合っているのですか?」
「私と無咎は傘を通じて話ができます。姿は見えませんが、思いが伝わっているだけでも私は充分です。さっ、着きましたよ」


エマがおススメしたテラスに着く。其処には薔薇がトンネル状に綺麗に咲いており、その先にはアンティーク調のテーブルと椅子が置いてあった。テーブルの上には誰かが用意したのか未使用のアンティークのティーカップと茶葉とティーポットが置いてあった。そして、そのテーブルの上に謝必安は自分の持ってきた月餅を3つ置く。


「美味しそうです」
「月餅です。私も無咎も好きなんですよ。良かったらなまえも召し上がってください」
「ありがとうございます」
「今度はなまえの国のお菓子も食べてみたいものです」
「日本のですか?」
「ええ、美智子さんから聞いたことがあります。練り切り…?と言っていたでしょうか?とても綺麗なものだと聞いております」
「練り切りですね!白餡でできているんですよ。じゃあ、今度は日本式のお茶会をしましょう。それまでに美智子さんから抹茶の立て方教わってきます!」
「謝謝、楽しみです」


その後、なまえと謝必安は椅子に座りながら会話を楽しむ。すると謝必安から「そろそろ無咎とも変わらないといけませんね」と言って席を立つ。そして傘を持ち開いて白い水溜まりへと姿を消す。それと入れ替わるように黒い水溜まりが出てきて白い男性は黒い男性へと変化する。


「こんにちは范無咎さん」
「元気だったかなまえ。まあ、謝必安と仲良く話していたからな。体調は悪くはないだろう?」
「元気ですよ。范無咎さんも元気そうで何よりです。謝必安が月餅を持ってきてくださったんですよ。一緒に食べましょう」
「ふん、一緒に食べろと言ってもお前はもう食べ終わっているみたいだが」
「私はお茶を飲むので大丈夫です」
「それだと私が楽しくない」


范無咎が話すと自分の持っている月餅を半分に分け、片方をなまえに渡す。


「食べろ」
「でもそれは范無咎さんの」
「私一人で食べても上手くない。私はお前が食べるとことを見たいんだ」
「それって…私の食べ方が何か変ですか…?」
「さあな」


笑いながら范無咎はティーカップを持ちお茶を飲む。普段のゲームでは勇ましい姿の范無咎もお茶を飲む姿は優雅であり様になっている。それを見ながらなまえは月餅を頬張る。


「矢張り、お前は上手そうに物を食べるな」
「そうですか?」
「嗚呼、お前の十面相のような顔の変化は私も謝必安も好きだぞ」
「そこまではっきり言われちゃうと…結構恥ずかしいです」

赤面になるなまえを見て、范無咎は微笑みながら椅子に傾けた傘を見る。傘の中に意識がある謝必安の控えめな笑い声が傘の中から聞こえてきた。






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