ふわりふわり、宇宙を漂う僕。命綱は付いてない。ただ重力に従って等直線運動を続ける。酸素も残り僅かみたいでだんだん呼吸が苦しくなってくる。僕はこのまま死ぬのだろうか?それでもいいかもしれない。最後にあの人が大好きだった宇宙で死ねるのだから、それなら本望だ。でも死んでしまったらきっとあの人は悲しむだろうな。そして僕の死体を見て梓くん、と泣きながら名前を呼ぶんだ。嗚呼、そう考えると死ぬにも死ねなくなる。でも助けなんか来るはずもなく、死ぬのも時間の問題。結局僕の人生なんてこの程度なのかも知れない。天才なんて自分で言っておきながら本当は臆病者の弱虫で、逃げてばっかり。気付けば表は完璧な木ノ瀬梓を演じ、裏では執着に怯えてる木ノ瀬梓が居た。でもそんな僕の本当の姿を理解し、接してくれたのがあの人。女神に救いの手を差し伸べられたような気分だった。あの人との出会いだけは僕の人生の中で一番意味のあるものだっただろう。僕はもうすぐ死んでしまうけど、せめてあの人が大好きだった星になってあの人を見守ろう。気付けば酸素ボンベの残量は0になっていて、重かった目蓋がゆっくりと終わりを迎えるように閉じられた。


空に置き去りのスピカ

(それは大切なあの人の大好きな星になれた少年のお話)



君ニ、願ウさま提出

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