「グラン、私やっぱりお父さんの役に立ちたい」


父さんの野望の為に日々強さを手に入れていく俺たち。だけど名前は違う、彼女は生まれつき体が弱く激しい運動をすると直ぐに体調を崩してしまうため、俺らと一緒に強くなることが出来ない。父さんもそれを知ってるからか、名前にサッカーをやらせようとはしなかった。でもそれは別の目的があったから。父さんは運動の出来ない名前を、エイリア石の実験台として役立たせようと考えていたのだ。俺は反対した、だってそんなことをしてもし体が耐えられなかったら名前は死んでしまうからだ。でも名前は違った、ただ純粋に父さんの役に立ちたがっていた。けど俺は反対することしか出来ない。分かってる、父さんが決めたことを俺が変えられるはずないって。分かってるけど、もう名前と二度と会えなくなってしまいそうな気がして嫌だったんだ。


「そんな顔をしないでよグラン。こんな私でもお父さんは必要としてくれている、それだけで私は幸せなんだよ」
「嫌だよ…俺は、名前が居なきゃ幸せになんてなれない」
「…グラン」
「ねぇ、行かないでよ名前。ずっと俺の側に居て」


まるで子供のような我が儘だと自分でも思った。こんなことをしても結果的には名前を困らすだけだというのに。でもそれほどまでに名前を愛してるから。だから少しでも俺の我が儘を聞いてほしかった。


「ごめんね、私にはお父さんを裏切るような真似は出来ないよ…。だから、行かなくちゃ」


そう言って名前は俺に背を向けた。引き止めようと思えば引き止められたはずなのに、それが出来なかったのはきっと彼女の背中が引き止めるな、と強く語っていたせいだろう。しばらくして彼女は足を止め、振り向くと笑って言うのだ。



「愛してるよ、ヒロト」



次に会った時の彼女はもう名前を呼んでくれない屍だった。



101107.
みいやへ捧げます
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