「落ち着いたか」
「…はい」


竹谷先輩に支えられながらゆっくりと体を起こす。忍装束には返り血らしきものがついており自分の取った行動を改めて反省する。またやってしまった。私はちょっとしたことで感情的になり、気が付けば敵も味方も関係なく地面に伏せている。今回も敵が竹谷先輩を中傷するような発言や態度を取らなければ私は理性を失わずに済んだ。だが無理だった。敵は全滅、おまけに私は竹谷先輩までもをこの手で殺めようとしてしまった。


「すいません先輩、私また、」
「大丈夫だって、気にすんな」
「でも、…私、もう先輩とは組めません」
「何故そんなことを言うんだ」


私の発言に不満を抱いたらしく、竹谷先輩の目が私を睨みつける。一瞬その鋭い視線に怯んでしまったが、引くわけにはいかなかった。今回は竹谷先輩を殺さずに済んだ、けど次も同じことが出来るとは到底思えない。次は本当に殺してしまうかもしれない、そう考えるだけで怖くなる。


「私と組めばまた先輩を殺めようとしてしまいます、だからもう先輩とは組めな…」


突如ごつんと竹谷先輩のげんこつが私の頭を直撃した。痛みに耐えるように殴られた頭を抑えてその場にしゃがみこむ。じわり、生理的に涙が出てきた。


「何するんですか!痛いじゃないですか!」
「お前馬鹿だな」
「少なくとも竹谷先輩よりは勉強出来ます!」
「ちげーって!そういう意味の馬鹿じゃなくて、だから、」


ぐっと強引に腕を引っ張られたと思えば私は竹谷先輩の腕の中にすっぽりと納められていた。そのまま先輩は腕に力を込める。強く、強く、まるで離さないとでも言うように。


「せ、先輩?」
「俺は後輩のお前に殺されるほど柔じゃねーんだよ」
「でも、殺そうとするのはもう、嫌です」
「なら治せ、俺を殺したくなかったらな」


そう言って先輩は歯を見せながら笑った。この人は本当に太陽みたいな人だ、どんなに駄目だと分かっていても必ず勇気をくれる。行くべき道を照らしてくれるのだ。だから私はそんな先輩に導かれた道ならば進んでみたくなる、その先にあるものが何なのかを知るために。



100828.
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