「…陽日先生は、どうしてそんなに恋愛を拒むんですか?」
「え、」


今週は二者面談の週。各クラスの担任が生徒と進路について話し合う大切な週だ。そして俺のクラスの本日最後の生徒は最近転入してきた苗字という女生徒。こいつがまた掴み所のない生徒で今もこうして関係のない質問をされている。


「ど、どうしたんだよ急に?俺のことなんかより今はお前の進路についてだろ?」
「すみません、少し気になったものですから。えーっと、進路でしたっけ?今はまだ特には考えていません」
「やりたいこととか興味があることとかはないのか?」
「興味、ですか…。そうですね、今は一番陽日先生に興味があります」


にっこり、作ったような笑みを浮かべて涼しげに答えた苗字に俺は苦笑いを返した。なんかこいつと話してると水嶋を思い出す。でも水嶋とはちょっと違う、だって水嶋の笑い方はこんなに冷めてはいなかったから。


「お前、どうしてそんな笑い方するんだ?」
「笑い方?何言ってんですか、笑い方なんて皆同じでしょ?」
「そうだけどさ、お前の笑い方、なんつーかすごく冷めてる。心から笑えてない感じがするんだよ」
「…」


作った笑顔のまま苗字は何も言わなかった。そんな苗字を見て俺は初めて生徒に恐怖というものを抱いた、と同時に苗字が可哀想だと思った。そんな冷めた人間になるまで苗字を追い詰めたものが酷く憎く感じる。苗字は同情されることなんか求めてないかもしれないが、でも俺はそんな苗字を助けてあげたくなる。


「陽日先生は本当に面白いですね」


クスクス、今の状況を楽しんでいるように苗字は小さく笑った。そして俺を試すかのようにぐいっと腕を引き、唇が触れてしまいそうなくらい距離を縮める。


「先生、ゲームをしましょう」
「ゲーム?」
「はい、私に本当の笑顔というものを教えてください」


苗字は相変わらず作った笑顔のままだった。けれどこれをきっかけに苗字が心の底から笑えるようになるのならばこれは思いがけぬチャンスかもしれない。そう考えたらだんだん面白くなってきた、俺に扱えない問題児など居ないのだとこいつに教えてやるぜ。俺は苗字の目を見てにやりと笑ってやると苗字に一言、言い放った。


「そのゲーム受けてたってやる」



100811.
これ水嶋のシナリオに似てるね…。
直獅誕生日おめでとう!

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