「えっと、こ、古里くん…!」


転入初日の放課後。知らない女の子が僕の名前を呼んだ。僕を知ってるってことは多分同じクラスの子なんだろう、出来れば接触を避けたいところだがそれだとせっかく話かけてくれた彼女を困らすことになる。とりあえず話だけは聞いてみよ。


「…なに」
「あの、先生に学校案内しろって頼まれてて、だから学校案内を…」


女の子はそう説明をすると申し訳無さそうに僕を見た。人見知りなのか、目を合わせようとはしない。本当は断りたかった、でもそうすれば彼女の立場がなくなってしまう、だから仕方なく僕は学校案内をお願いした。意外に校舎の中は広く、見た感じ覚えるには時間がかかりそうだった。そんな中一生懸命に校内を案内してくれる女の子。こんな子は生まれて初めてかもしれない。でも明日になればもう彼女と関わることはない、僕なんかと一緒に居れば不幸になるから、だから明日からはまた他人に戻るんだ。


「何だか、不思議だね」
「…え?」
「古里くん、もっと喋らない人かと思ってた」
「…別に」
「やっぱり人は見かけによらず、なのかな」
「…」
「私はこの通り、人見知りで暗くて都合のいいように皆から無理矢理学級委員になんかさせられちゃってまさに見かけ通りだけど…、古里くんはもっと自分に自信を持ったほうがいいよ」


初めてだった、自分より僕を評価してくれる人間なんて。初めてだった、自信を持てと言われたのは。その言葉に何だか胸がいっぱいになってしまって何を話せばいいのか分からなくなってしまった。すると彼女は笑って言ったのだ。


「まだ希望はあるはずだから」


さっきまでの喜びとは違い、今度は背筋が凍るような感覚に襲われた。希望、その言葉が何故か自分達の計画のことを指しているような気がしてならない。もしかしてこの子もマフィアなのかと思ったがリングも武器も見当たらないしどうやら普通の一般人らしい。…きっと考えすぎたのだろう。しばらくして彼女と別れ、家に帰ろうとしたらいきなり不良にボコボコにされた。そしてそこを偶然通りかかったボンゴレ]と関わりを持ってしまい、一緒に川に落ちるハメに。ボンゴレ]は僕と同じ、ダメな人間だった。そして何よりマフィアとは思えないほど優しい心を持っている。"まだ希望はあるはずだから"彼女の言葉が頭の中に蘇る。もしかしたら彼女が言いたかったのはこの事だったのかもしれない。だから少しだけ賭けてみようと思った、最初で最後の希望を。



101109.
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