ロクティエ(+SS)

ロクティエ(+SS)

「あなたの…っ、所為だ…からなっ」
どん、とティエリアにいく分強めに胸を拳で叩かれて、ロックオンは小さく呻いた。
(ああ、何だってこんなことに……)
ロックオンは満開の桜の花の隙間からわずかに覗く青空を見上げ、ため息をついた。


マイスター4人で行った花見の席で、ティエリアが水と間違えて日本酒を勢い良く呷ってしまい、ロックオンが慌てて止めに入ったがすでに時遅し。
うつろな眼をしたティエリアに恐る恐る話しかけたロックオンは、自分の迂闊さを呪いたくなった。酒などその辺に放置するのではなかった。


(まさか泣き上戸な上、絡み酒とは……)


もう一度、胸を叩こうとした腕をとり、やんわりと制止する。いくらティエリアが細腕だとは言っても男の力だ。加減なく叩かれればそれなりの衝撃がくる。これ以上は叩かれるのはごめんだった。

腕を取られて動きを封じられたティエリアは軽く息を飲んで、上目使いで睨んできた。
目元は酒の所為でうっすらと赤くなっている。
しゃくり上げながら涙に潤んだ眼で見上げられて、うっかり可愛いと思ってしまった。
こうして感情を露にすると年相応かそれよりも幼く見える。普段のツンとした態度より、こちらの方が何倍もいい。そう思うと自然と口元が緩んだ。


「何を笑っているんですか!」
「いや何でも …」
「何でもなくて笑ったりするのかっ」


(こんな顔をしてきゃんきゃん吠えられても、ちっとも恐くないんだけどなぁ)
しかもこのやり取りもさっきから何回繰り返したと思っているのか。

低く唸っているティエリアの頭をぽんぽんと優しく叩くと、今度は「子ども扱いするな」と怒られた。
そうしてまた、ティエリアがロックオンをぽかぽか殴るののくり返し。さっきからずっと絡んだまま一向に解放してくれる気配はない。
それを見てアレルヤは後ろの方でけらけらと笑っている。


「他人事だと思って…!」
「だって他人事ですから」


それになんだか猫がじゃれついてるみたいで見てて可愛いですし、と赤い顔をしたアレルヤは心底楽しそうにふふ、と笑う。
しまった、こっちは笑い上戸か。
(あああ、もう!)
アレルヤは当てにならないと思い、ロックオンは刹那に助けを求めようとしたが、刹那は刹那で自分の世界に入り込んでしまっている。
赤くなってはいないが、ちょっと目つきがおかしい。何か呟きながら花占いをしているようだが…桜の花じゃ意味がないぞ、刹那…。
(刹那まで飲んでるのかよ!)
良く見ると刹那の周りにはビアー缶やらボトルやらが散乱している。一体どれだけ飲んだというのか。明らかに許容量オーバーだ。


( 未成年が揃いも揃って…!)
あまり人の事を言えたギリではないが、今度飲むときには加減てものを教えてやろう、とロックオンは再び空を仰いでため息をつく。



結局、泣きつかれたティエリアがロックオンの膝を枕に眠ってしまうまで、同じようなやり取りは繰り返された。



―――――――
ガソダムAのお花見絵のロクティエ膝枕を見て、ティエリアの目元に涙の跡があったので、泣きながら眠ってしまったのかな〜と思ってこんなん描いてみました。


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