徹→15歳
飛雄→5歳
※保育士スガさん名前だけ友情出演






「とおる兄は弱ぇなぁ」


浮上した意識をどうにか掴んで、最初に聞こえたのはまだ幼い弟の声だった。内弁慶な彼の声は自分の家である安心感から大きく張っていて痛む頭に酷く響く。そこでそういえばここは自宅であるという事をぼんやりと思い出した。次いで学校も欠席したということも。


「いくら流行にノりたいからってカゼひくのはオレどうかと思う!」

「…‥トビオちゃん、そんな難しいこと誰から聞いたの」

「ママが言ってた!」


すっかり足を投げ出した状態で俺の腹辺りに跨がる弟の顔は所謂どや顔というやつだった。自他共にブラコンだと認めている俺にとってその顔は天使そのものにしか見えない。だけど、今は腹にかかる5歳児の重さがひたすら辛かった。
不覚不覚、なんたる不覚。飛雄の言うとおり俺はタチの悪い風邪をひいてしまったのだ。頭痛は酷いし喉も痛い。鼻づまりが凄まじいせいで口は乾くし声はうまく出ない。せっかくのイケメンフェイスが台無しだなんて頭の片隅で虚ろ気に思う。もっと軽い風邪だったら飛雄にも構ってやれるのに、起き上がることすらだるくて面倒な今は到底無理な話だ。


「トビオちゃん、げほ、他の部屋行ってな、移っちゃうから」

「やだ」

「やだじゃなくてね、俺みたいになりたくないでしょ?」

「とおる兄みたいに?」


きょとん、といった風に首を傾げる飛雄と来たらそれはそれは可愛くて、なんかもう今死んでも悔いは一切無いんじゃないかと思う、いやさすがに言い過ぎたけど。可愛すぎる飛雄を写メって岩ちゃんに送ってあげたかったけど、携帯は確か鞄に入れっぱなしだから諦めた。短い葛藤を起こしている間に飛雄は「とおる兄になりたいけど風邪やだ…」なんて可愛いことを言う。きっと俺の顔は今馬鹿みたいに緩んでるだろう。


「ね、だから母さんとこ行ってた方が…」

「でもね、オレしーっかりガラガラペーしてっからへーきだ」

「……なにそれ?」

「すがわらせんせーが言ってたやつ」


飛雄は再び誇らしげな顔を見せた。菅原先生というのは確か飛雄が通う幼稚園の保父さんだ。学校帰り迎えに行った時に何度か会ったことがあるけど、保育士という仕事がなんとも天職である印象を受けた。その菅原先生が言った、ガラガラペー。なんだそれ。


「飛雄、その、ガラガラペー…?って、何?」

「とおる兄知らねーの?」

「んー、恥ずかしながら」

「ガラガラペーってさァ、上向いてガラガラってして、ペッする」



5歳児の中でも恐らく頭の足りない方の5歳児に入るであろう我が弟は相変わらず自信たっぷりのどや顔だった。そんなところも可愛い。可愛いんだけど、オチの見えない会話を続けるのも体力的にだんだん辛くなってきた。地球の重力がどうなっているのか知らないけど、さっき眠りから目を覚ましたばかりなのに既に目蓋が重い。


「ごめ、トビオちゃん…俺眠い…」

「ねる?」

「うん、トビオちゃんは母さんとこ行きなね」

「…ガラガラペーした方が、のど痛くない」

「……え」


上を向いて、ガラガラして、ペッてして。それをやった方が喉が痛くない。


「えっと…トビオちゃん」

「なにぃ?」

「ガラガラペーって、うがいのこと?」

「…うがい、うん。手洗ってからするやつ」


うがいという単語にピンとこないのかしきりに首を傾げる飛雄。多分俺は正解だ。解ってからガラガラペーを聞けばそのまんまだと思う。解らなかったのは、まあ風邪のせいにしておこう。


「トビオちゃん、俺、ガラガラペーしてくるよ」

「おひるねいいのか?」

「喉良くしてから寝たいし、せっかくトビオちゃん教えてくれたし。一緒にする?」

「…ん、する」


解ってもらえたのが嬉しかったのか、飛雄はぴょんと飛び降りてから俺がゆっくりとベッドから降りるのをそわそわしながら見ていた。上着を着てから飛雄と手を繋ぐ。本当はあまり接触しない方がいいんだろうけど、どうせ洗面所に行くんだし、洗い流してしまえばいい。

今はただ、少しだけ満足げに見える弟の気持ちを共有したかった。


手繋ぎバスターズ
(これでぜったいかぜひかない!)






瀬田様からのリクエストで「及影兄弟設定」でした。トビオちゃんがショタ化したとか年の差とかは完ッ全に私の趣味です…!
ひょっとして原作年齢そのままでの兄弟設定をご所望でしたかね…!?あ、あの、書き直しも受け付けますので…!持ち帰りや文句、罵詈雑言等は瀬田様のみOKです(^O^)
フリリクありがとうございました!
尊敬する道端ロータスのこころ様より頂きました!思い切ってフリリク出して良かった…
攫いたい可愛さのショタ飛雄ちゃんと優しいブラコンの及川さんです
本当にありがとうございました



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