「明けましておめでとうトビオちゃん。今年もよろしく」 ガバアと後ろから抱き着かれた。 夜も更けた、俺の狭いアパートの一室にて。 テレビ画面ではお坊さんがひたすら鐘を突いている。何が面白いのか知れないが、これを見ないと年越しの気分がしない。 「おめでとうございます」 ゴーンと鐘が鳴った。今年の明けだ。 懐古主義でもないけれど、去年のあれこれを思い出す。妙に楽しかったな、とぬるま湯に浸かるように心地好い。 「トビオちゃんトビオちゃん、朝は一緒に初詣に行こう。おさい銭投げてお祈りしよう。おみくじ引いてさ」 俺の背中にコアラのように張り付いて、及川さんは次から次へと話題を引き出す。言葉はコロコロ転がる。普段はうるさいと思うが、今は不思議に寛容な気持ちだ。年の初めは清らかなものだろうか。 「トビオちゃん、愛してるよー」 俺の反応が薄いのに焦れた及川さんが、肩口から首を伸ばして頬にキスをした。チュ、と可愛らしいリップ音はやけに新鮮に響く。 そうか、愛しているんだなあと、唐突に感じた。物思いに浸っていたせいかもしれない。 俺の腰に手を回す及川さん。来年もまた、一緒に寄り添って明けを迎えてくれるのかどうか。そうだといい。しみじみと思う。 「……俺も、……」 20130101 今年もよろしくお願いします。 |