ヤマなしオチなし意味なし。 ちょっと性的。 下品で馬鹿な話。 その日、温い微睡みの朝は上がった怒声にブチ壊された。 「あ゛ー! 及川さん!」 シングルサイズのベッドの上で、影山飛雄は悪い目付きを更に剣呑にしてギリギリと及川を睨み上げる。 シーツを顎まで引き上げた飛雄。なぜなら、素っ裸だから。 昨夜、二つ上の先輩及び恋人の及川とめくるめく官能の夜を過ごしたので、腰も痛いし喉も痛い。それでも叫ばずにはいられなかった。 「こんの変態! あんたホントに変態!」 「あは、起きたの飛雄ちゃん。元気だね流石、運動部」 及川はいつでも爽やかだ。怒髪天を突く勢いの影山など屁の河童。既に自分だけきちんと服を着て、髪もいつものようにアシンメトリーに整えている。 「なんでそんなに怒ってるのかな」 「分からないんスか!?」 「んンー?」 ニヤニヤと、及川は裏の読めない笑顔を浮かべた。それからピンと指を立てる。 「あ、あれのこと? 昨日飛雄ちゃんに使ったピ○クローター」 「うわーあああ!」 白々しい言葉を受けて飛雄は絶叫した。自分が問い詰めたくせして、口に出して言われると恥ずかしいらしい。 「あっは、飛雄ちゃんかんわいー」 遂に顔までシーツを引き上げた飛雄の頭上から上機嫌な声が降ってくる。飛雄の顔は発熱していた。忌ま忌ましい昨夜の記憶を思い出している。 「そッ、その変な道具、嫌だって言ったのに」 そうだ。飛雄は確かに言った。 昨夜、いざ挿入という段階になって、及川が取り出した性具。道具のポップな色合いと不釣り合いな及川の禍々しい笑顔に、飛雄は身の危険を覚えた。だから、無駄に高いプライドを捩曲げてお願いしたのに。 「“それ入れちゃ嫌です”って! もー超可愛かった飛雄ちゃん! ごちそーさま」 真っ赤になって震えながら、及川に縋る飛雄の姿。そのいとけなさと艶めかしさ。 サドの気がある及川にとってはこれ以上ないシチュエーションだった。だから、抗議を無視して入れた。 「もう嫌ですよ! 暫くあんたとエッチしませんから!」 目だけを覗かせて飛雄は言い放つ。そんな可愛い子に顔を近付けて及川は。 「でも飛雄ちゃんすっごくよがってたし。何回もイッたよねー。ね?」 怒りを煽るようなことを言うのだ。 ボンッと飛雄の頭から湯気が立った……気がした。今度の顔の赤さは羞恥よりも怒りだ。 「ふっざけんなあ! 腐り落ちて死ね!」 「でも腐り落ちたら飛雄ちゃんが困るでしょ?」 「うるさい!」 あんたなんか嫌いだ! と捨て台詞を吐いて、飛雄は及川に背を向けた。 背中が本気で怒っている。ちょっとマズいかも、と初めて思う及川であった。 一週間くらいはセックス禁止になりそうだ。 「……飛雄ちゃーん」 「……」 まだ試していない道具があるということは、暫く言わない方がいいだろうか。 しかし、敢えて空気を読まない及川は、今夜あたりにまた新しい道具を携えて飛雄の下を訪れる予定である。 20121113 及川さん変態、の前に管理人が変態でしたサーセン。 |