02 | ナノ


02



「…………」
「…………」
「……痛い?」
「うん、ちょっと、しみる」

 俺は何を当たり前のことを聞いているのだろう。

「絆創膏とか」
「あ、私、持ってるよ」

 黒部さんは怪我していない方の腕を地面に置いた鞄に突っ込んで、その中を探る。
 前屈みになっていて、ああ、そんな短いスカートで、と俺は思った。
 ……いや、正面から見ていても、これは。
 俺は視線を外す。

「あったあ」

 ふうん、なんか意外だな。

「今、意外だなって思ったでしょ」
「えっ!?」

 黒部さんは頬を緩ませて、絆創膏をこちらにぴっと突き出した。

「顔に書いてあるよ。ねえ、これ、貼って?」
「えっ……う、うん、わかった」
「私ね、保健委員だから。一応こういうのは持ってるよ」
「そうなんだ」

 話しながら、タオルで拭いたばかりの柔らかい肌に絆創膏を合わせる。
 当然だけど、冷たかった。

「……黒部さん、今帰り?」
「うん、そうだよ」
「どうして公園にいたの?」

 一瞬の沈黙に、焦る。
 聞いちゃいけないことだった?

「ねえ、吉田くん」
「な、なに?」

 黒部さんはじっと俺の目を見つめてきた。
 異性と見つめ合うことなんてない俺は、目を逸らしそうになったが、何故か逸らせなかった。

「今日、これから、暇?」

 絆創膏は、もう貼り終わっている。

「この近くで、夏祭りがあって……もう、始まってるんだけど」

 俺はとっさに返事が出来なかった。



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