今日は何の日?
 
「ゆ・う・し♪ゆ・う・し♪」

「なんやねん、岳人。さっきから…」


岳人がさっきから小刻みに揺れていると思ったら
小刻みに忍足を呼んで、なんだか嬉しそうだった。


「何じゃねえよっ!今日が何の日か覚えてねぇのかよっ!」

さっきまでの嬉しそうな表情から一変して、岳人は急に態度を変える。
これには忍足も困ったようで、必死で思い出そうとしている。
珍しく忍足の目が泳いでいる。
あーぁ、完全に覚えがなさそうだな。


「あ…あぁ!そやった!あの日やろ?覚えてるで?そやそや!あの日や!」

何かを思い出した風な忍足は、まるで皆無の演技力で岳人を宥めるのに必死だった。


「あの日って何の日?」

「あの日ゆうたらあの日やろ!?岳人こそ忘れたんかいな?」

まるで才能のない馬鹿げた忍足の返しに
更に馬鹿な岳人は、瞳をキラキラさせながら感動していた。


「ありがとう!さすが侑士だぜ!俺が無意識のうちにバク宙成功させた日を知っててくれてるなんて!教えてもないのに!」

「…ガックン、次からは2人の記念日の時だけにしてや?心臓に悪いで。」


馬鹿な2人は部室で抱き合って、既に2人の世界に入ってやがる。
目障りだと言ってやりてえとこだが、せっかくだ。
ここは俺も乗ってやるか。




「…慈郎、今日が何の日か覚えてるか?」

「あー!それって超失礼だCー!俺だっていっつも寝てるだけじゃないからねー!」

珍しく目が覚めている様子の慈郎に言ってやると
慈郎は珍しく少し拗ねながら返答した。






「今日はあそこのコンビニでポッキーが特売日じゃん!あー跡部に言われて思い出したよ、良かった!」

慈郎は嬉しそうに俺にお礼を言ってきた。
拗ねたり笑ったり
全く、可愛いじゃねぇか。


「…っじゃねぇよ!今日は俺んちに来る日だろ!?」

「…あー、えー…でもポッキーがぁ。」


まさかのポッキーに対する敗北感に
部長としての威厳を根こそぎ持っていかれちまった俺だが。



「そんなもの!………どの店でも、いくらでも買い占めてやるから。…いくぞ!」


部室の扉を無造作に開けると
慈郎はパッと明るくなって、忍足達に手を振った。

岳人くらい馬鹿だったら、もう少し話もまとまりやすいんだが。
若干馬鹿の度合いが違うんだよな。
慈郎はどちらかと言うと天然だからな。


「跡部?じゃあセブンとサンクスとローソンとファミマと…とにかくコンビニ全制覇宜しく♪」

「あぁ、いいぜ。その代わり俺が買ったんだ。食べきるまで俺んちで保管するから、食べきりに通えよ?」

「うわぁ!それ超楽しそうじゃん!通う通うー♪♪」

「…やっぱりどっちも同じだな。」

「?」


まるで意味の解ってない慈郎に、呆れたような笑いを浮かべる。
馬鹿な子ほど可愛いとは、昔の奴も良い言葉残したもんだな。




 

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