キミに希望の花束を



狛枝誕生日ss





日付は大安吉日、天気は快晴、加えてお邪魔虫もいない、そんな最高の条件の元ボクは苗木クンと二人で海に来ていた。
大した会話があるわけではないけれど、こうやって超高校級の希望である苗木クンと二人きりで海辺を歩けるなんてボクは本当に幸せ者だ。
この幸運を胸に死ねたらボクの人生は幸せだったといえるんじゃないだろうか。
そんなつまらないことを滔々と考えていると、前を歩く苗木クンが何かあったのか、急に足を止めた。
つられてボクも足を止める。

ねぇ狛枝クン、と振り向いた苗木クンの表情はどこか嬉しそうだった。
可愛いなぁ。
少し蒸気した頬は彼の幼い顔を更に幼くさせて非常に愛らしいのだけれど、本人に言うと怒らせてしまうので心に留めて置くだけにする。

「希望の希っていう字はね、希う(ねがう)って読むことも出来るんだって」
「そうなんだ、苗木クンは博識だね!」
「からかわないでよ」

子ども扱いされたと勘違いしたのか、苗木クンは頬を膨らませて機嫌を損ねてしまった。
怒っているようにはどう頑張ってもみえないその表情はむしろ庇護欲をそそる物だったけれど、折角二人きりでいるのに彼の機嫌を損ねたたままでは勿体ない。
ボクが慌てて謝ると、元々本気にしていなかったのかすぐに機嫌を直してくれた。
うん、やっぱり苗木クンには笑顔が似合うね。

「ねぇ、狛枝クンの希いって何?」
「ボクの願いは、希望の踏み台になることだよ………」
出来ればキミの希望の、という言葉は心に閉まっておく。
「ぶ〜不正解〜!!」

そう言ったかと思うと、苗木クンはボクの目の前に紫色の綺麗な花束を突き出した。
目を白黒させるボクに、苗木クンはいたずらが成功した子どものように茶目っ気たっぷりに笑った。

「狛枝クン、誕生日おめでとう。生まれて来てくれてありがとう!」
「………!?」
「じゃあもう一回聞くね、狛枝クンの希いは?」

苗木クンの意図を理解した途端真っ赤になったボクは、何も言えずにただ苗木クンの手を握った。
そんなボクの様子を見て苗木クンは満足そうに笑った。




キミに希望の花束を
(キミと一緒に居られればボクは幸せです)












あとがき
4月28日の誕生花であるサクラソウの花言葉は「希望」と聞いて書くつもりはなかったのに書いてしまいました。
とりあえず狛枝誕生日おめでとう!






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