ボクの召使い



ボクの召使い
(狛枝が苗木君の召使いになったらいいなぁという妄想)


「私は、私は……」
 こまるはいくらか逡巡した様子を見せた後、スイッチを押した。目の前の少女が嫌らしい笑みを見せた瞬間、己の間違いに気付いたが、既に手遅れだった。
 爆発音。
 こまるがスイッチを押した瞬間、隣のビルが大きな音を立てて崩れ始めた。その隣のビルも、次から次へと花火のように轟音が鳴り響く。それと同じくして、街のあちこちから火柱が巻き上がる。人々の驚き戸惑う声はさながら見物客の歓声と言った所か。
「何だ、何が起こってるんだ?」
 未だ状況を読み込めていない灰慈に、モナカは何が楽しいのか、くすくすと笑っている。
 腐川がこちらを労るような視線を向けているのを感じたが、こまるは言葉も出なかった。
「私は、私は……」
「ありがとう、お姉ちゃん。お姉ちゃんのおかげでこの街は絶望に染まることが出来たよ」
 にっこりと笑う少女の笑みに、こまるは目の前が真っ暗になった。



「……ひどい有様だな」
 ヘリポートから着地し、町の有様を見た苗木は苦々しく感想を述べた。街は先の絶望による大掛かりな爆破テロのおかげで壊滅状態だった。かつて高層ビルが立ち並んでいた景観は一転し、がれきの山と化している。爆発の影響で地面にはガラス片とコンクリートの欠片があちこちに散乱しており、普通に歩くのにも困難を窮めた。
 既に先遣隊が到着し、事態は収束へと向かっていると報告を受けてはいたが、絶望の残党がどこに潜んでいるか分からない。それにこの街にいる要救助民がどうなったのかもまだ報告を受けていない。
(こまる……)
 腐川がいるので大丈夫だと思うが、嫌な予感がしてならない。虫の報せとでも言うのだろうか、塔和シティに近づく度にその思いは増すばかりだった。
「心配していても始まらないわ、行きましょう」
 霧切が元気付けるように、ぽんと苗木の肩を叩いた。苗木は目線を少し上げ、彼女の表情を窺う。相変わらずの無表情だったが、彼女なりに自分を心配してくれているのが分かり、苗木はふっと息を吐き出す。
「そうだね、まずは十神クン達と合流しようか」
 おそらく十神と合流すれば、腐川にも合流出来るだろう。そうすれば、こまるとも会えるはずだ。
(本当に、そうだろうか……)
 匿名の救援要請、そして頃合いを見計らったかのように起きた子供達の反乱。
 何もかもが出来過ぎているのではないか。何者かが自分達をここに呼び寄せているのではないだろうか。しかし、誰が、何のために?
(今は考えていても仕方ない)
 ゾクリ。
「……っ!?」
「どうかした?」
 先を歩く霧切が振り向き、急に足を止めた苗木に眉を顰めた。
「いや、何でもないよ。ごめんね、今行く」
 視線を感じたような気がしたのだが、苗木がいる公園広場は爆撃の影響を一身に受け、辺り一帯は拓けた場所になっている。誰かいたとしても、すぐに気付くはずだ。
(少し、疲れてるのかな……)
 苗木はもう一度だけ後ろを振り向き、誰もいないことを確認すると、霧切の後に続いた。



 こんな感じでちまちま続きます。
 プロットは大体出来ているので、最終的には統合してアップし直せたらと思ってます。





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