君の夢を見る夢を見た



狛→苗+日+七(王国心パロ)



 最近、おかしな夢を見る。
 その中で、決まって、いつも同じ少年が出てくる。
 茶色の髪に、幼さの残る顔立ち。背は少し低めで、友達に囲まれていつも楽しそうに笑っていた。
 何の変哲もない、普通の少年。
 
 その見た目とは裏腹に、彼は選ばれた勇者で、仲間と共に世界を救うための旅をしているらしい。
 彼は言弾と呼ばれる特殊な弾が装填された銃を操り、絶望と言う名の闇と戦っていた。
 彼の持つ銃だけが、絶望で覆われた世界に再び光を灯すことが出来るのだという。
 彼はその小さな肩に、世界の命運というあまりにも重すぎる荷物を背負っていた。

 始めて見た時はあまりにも突飛な内容に、自分はおかしくなったのではないかと頭を悩ませた物だ。
 しかし、何度も彼の夢を見るうちに、ボクの中で不思議な感情が生まれつつあった。
 親近感とも違う、もっと別の何か。
 それは、きっと―――…。


 ドスン。
 らしくもなく考え事に耽っていたせいか、肩に鈍い痛みが走る。
「すみませ……」
 謝罪しようと顔を上げた瞬間、相手の異様な姿に思わず言葉に詰まる。 夏の盛りだというのに、真黒なコートをきっちりと着込み、目深にフードを被っていた。
 長袖のコートを着ている自分が言うのもおこがましいが、どう見ても怪しい。
 下手に関わり合いにならない方が良いだろう。
 再度、謝罪の言葉を投げ掛け、逃げるようにその場を去ろうとした。
「苗木誠を感じているか」
 男が呟いた言葉に、つい足を止める。
 苗木誠。
 どうして彼の名前を知っているのだろう。
「キミは、一体……」 
 振り向くと、男の姿は既になかった。
 まるで狐に包まれたような気分だ。ここ最近見る夢といい、気味が悪いことばかりが続く。
「何だっていうんだ……」
 それに答える声があるはずもなく、生温い風が頬を撫でる。
 足元にあった小石を苛立ち紛れに蹴り飛ばしたが、気が晴れることはなかった。


 
 滲み一つない白い壁に、部屋の中央に置かれた真っ白な長机。
 部屋の側面には床から天井まで空いた大きな窓があり、やはり白いカーテンが垂れていた。
 真っ白な空間。何から何まで白一色で統一された奇妙な空間だった。

 少女は色鉛筆を一つ手に取り、カンバスに色を重ねていく。
 赤に橙、青に緑。みるみるうちに絵が出来上がっていく。
 少女は出来上がった絵を手に取り、出来を確認するように見つめた。
 しばらくそうした後、満足げに頷くと、スケッチブックから絵を剥しにかかる。

 ブゥゥン。
 空間が裂ける音がして、少女はカンバスに伸ばしていた手を止めた。
 黒い靄が集まり、その中から黒いコートを身に纏った男が現れた。
 男は室内だというのに、フードを取ろうともしなかった。少女は特に気にした風もなく、男に話し掛ける。
「会って来たの?」
「あぁ。アイツは確かに苗木を感じていた」
 男は少し疲れた調子で、少女の質問に答えた。低い、落ち着きのある声だ。
「そう……」
 少女は男の答えに顔を歪めると、先程自分が描いた絵に視線を戻した。
 カンバスには真っ白な髪の少年と茶髪の少年が手を取り合って笑っていた。
「彼と苗木君は繋がっている。苗木君が目覚めるためには、狛枝君が……」
「お前が気に病むことはないんだ、七海」
 少女が言い終わる前に、男が少女の言葉を遮った。
 男は少女を元気づけるように、肩に優しく手を置いた。
 七海と呼ばれた少女は、男の手をそっと握り返し、力なく微笑んだ。





君の夢を見る夢を見た
(少年が真実を知った時、物語は動き出す)










あとがき
 以前からやりたいと思っていた王国心(要.英訳)もとい六空パロです。
 狛枝が六、苗木君が空、日向君が陸で、七海が波音という配役でした。
 原作に近い配役になったと思っているのですが、パロとはいえ、狛枝に六の役を当て嵌めるのは辛い物がありました…。
 とりあえず書ける所だけでもと筆を執ったので、元ネタを知らない人には少し分かりづらかったかもしれません。
 細かく説明すると原作のネタバレになってしまうので、興味がある方は是非Uをプレイしてみて下さい(ステマ
 気力があれば、ちゃんと最後まで書いてみたいです。
 というか、狛苗で六空パロ、誰かやってくれませんかね…(ボソリ








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