ヒーロー達の中で、不思議に思うことが一つある

それは仲間ヒーローのひとり、名前の素肌を見たことがないということ

素肌、といっても全裸ではなく背中から二の腕付近

同じ女性である、ブルーローズやドラゴンキッドさえ知らない


「ってことなんだ。名前、背中見せろ」
「何が‘ってことなんだ’だよ。意味わからん」
「だってあいつら(子供達)が聞いて見て来いって言うんだもんよ」
「なんで、乙女の素肌をおじさんに見せにゃならんのだ」
「俺だって知らねえよ!いいから、つべこべ言わずに脱ぐ!」
「やめい!」
「脱げーっ!」
「やめろー!変態スケベえっちセクハラぁぁぁあ!!」
「みんなのためだから!」
「私の大切なものがなくなるわ!」
「そこまでは望んでないから!」
「うっせー!」



「…………何やってるんですか?」
「バニーちゃんっ!」
「バーナビーさん!」
「「助けて!!」」
「…何故二人から‘助けて’と言われなくてはいけないんですか?」
「名前が服を脱いでくれないの!」
「おじさんが服を脱がすの!」
「「だから、助けて!!」」
「…」



「虎徹さんに加勢しましょう」
「よっしゃ!」
「いやぁぁぁあ!?」



「良いではないか、良いではないか!」
「うるさい!虎徹さんなんか、呪われて死んでしまえ」
「やめて!この子怖い!」
「おとなしくしたほうが身のためですよ」
「おとなしくしても身のためになりません」
「まったく……往生際が悪い人ですね」
「おいコラハンサム。顔が良ければ何やってもいいと思ってるな」
「ええ、もちろん」
「くそ野郎がっ!」


「行くぞ、バニーちゃん!」
「はい、虎徹さん!」
「「せいっ!!」」



バリっと豪快な音がして、背中がさらけ出される

白い素肌に、金色の蛇が這う


「はあ…」


名前は諦めたように頭を掻き、近くの椅子に座る



「え、お前それ…」
「な、んですか……その、蛇?」
「そ、蛇。蛇は性の現れ、金は強欲。掘りに行く前の夢がこれだったからちょうどいいなあって」
「虎徹さん、これって…」
「入れ墨だ」
「女じゃあまりしないからな。だから見せたくなかった」
「「…」」




言葉を失う二人を他所に、衣服を整え名前は席を外した








………―あれから数日、











「名前さん…」
「なんですか?バーナビーさん」
「その…」
「?」
「せ、」
「せ?」
「背中を見せてください!!」
「は?」
「貴女の背中が頭から離れなくて、毎日毎日夢に見ては勃起するんです!!」
「はあ!?」
「お願いします!名前さんの背中を、僕にください!」
「…」
「貴女の背中は素敵でした。細いくびれ、滑らかな肌、形のいい肩甲骨………そして、絡み付く金色の蛇……ハア…素敵です」
「…ああ、はいはい。バーナビーさんって背中フェチなのね」
「毎日、見て舐めて噛んで愛撫したいです」
「やめてください」
「それでは、お互い裸になって見せ合いましょう!」
「…何を?」
「背中です!」
「いや、背中は見せ合えませんよ」
「ではくっつけてフュージョンでも…」
「意味がわからん」
「意味ならあります!僕と名前さんの心が通い合います!」
「合わないよ、きっと」
「きっとなんて憶測聞きたくありません!」
「ええ……なんて自分勝手…」
「さ!名前さん!」
「え、ちょ待っ!?」
「脱いでください!」
「やめろ!離せ!」
「何故嫌がるんですか!すべてをさらけ出してください!」
「嫌がるのは普通だ!馬鹿か、あんたは!」
「んもう、しょうがないですね。んでは僕が先に脱ぎますよ」
「意味がわからん!!」
「いいからいいから!さっ!」
「キラキラした顔で‘さっ!’とか言ってんじゃねえよ!」
「ああ、名前さん……貴女の背中を妄想するだけで、心が張り裂けそうです…っ」








脱ぐな 脱がすな

(裂けてしまえ!)