お泊りday
今日は月1の泊まり日。だっつーのに何なの?
いや、分かってっけどよ。
俺も軽く噂は聞いてるから。最京大がやる明後日の練習試合。
うちもビデオ班の奴らが何とかカメラだけでも潜り込めねーかなっつってたし。でも無理だろうなあ、ヒル魔いるし。
そのヒル魔は相手のドデカい隠し玉対策に追われてノーパソをカタカタやってる。
分かってる、分かってっけどよ…最近俺放ったらかしなわけ。高校ンときはこれでもかってぐらい構って来たっつーのによ。ちょっと寂しい、なんて思ったりしてな。ホントにちょっとだけだけどな。
月1の泊まり日くらいなんとかなんねぇの?つーか試合なら泊まんの別日にしたって良かったのによぉ。なんでわざわざ試合の前々日にするかなー
「糞、うっせーな…糞バカ爬虫類」
「俺何も言ってねぇけど」
「もうお前先行ってろよ」
チャリ、と無機質な鍵を放り投げられて慌ててキャッチする。
ヒル魔の、部屋の、鍵…?
「どした」
「ゃ、なんでもねェ…」
見れば相変わらず不機嫌そうに眉間に皺を寄せながら風船ガムを膨らませてノーパソカタカタ。
「ここ最近ずっとあぁなの」
「ペチャクチャくっちゃべってんじゃねぇぞ糞マネ。もう仕事終わったならさっさと帰れ」
「ハイハイ。お邪魔なのね」
「分かってんならさっさとしろ」
「ホンットヒル魔君って勝手!さっきまで用事言いつけてたのはヒル魔君なのに今度は帰れって。葉柱君も帰っちゃえばいいのに」
姉崎はそう言って出て行ってしまった。
「お前は帰すわけにはいかねぇなァ」
「帰んねーけど。でもお前が終わんねーなら俺は別日でも」
「糞、もう終わるっつってんだろ。先に部屋行ってろって」
「…ヒル魔」
「あ゙?」
「俺やっぱ帰るわ。試合見に行くから…またそんときに寄る。試合、勝てよ」
渡して貰った鍵を投げたら速攻で投げ返ってきた。
「…カ?」
「お前んだ、持ってろよ」
え、うそ、マジで?マジで?
「うるせーな、いらねーなら返せ」
またうるさいって言われた。
「くれたんだろ?俺に」
「おー」
「試合終わったら…上がって待ってていい?」
「ん」
「じゃあ今日はここで待ってる。いいだろ?」
「好きにしろ」
貰った合鍵をキーケースに入れて暫く眺めてた。
***
「………… ……………ら、……葉柱」
ヒル魔の声。
「…ルイ」
「っ!!?」
「起きたか?糞寝坊助」
「〜〜〜〜〜〜〜っ」
いつの間にか寝てたみてぇで、さっきより20分ばかし時計が進んでる。
つか、今の…なに。すげぇ甘かった。
「飯奢るぜ」
「……っ」
チュッと軽く唇が触れる。
すげぇドキドキする。久々だから?ヤバい。もっとしたい。
「…ヒル、ま」
「ん?」
あ、またキスされる…
「っ」
「っざけんなよ糞ドレッド」
「ぇ、阿含?」
「チッ」
懐から抜いた銃の照準を阿含に合わせるヒル魔。
「電気付いてっからまだ誰か居んのかな〜って覗いただけだっつの」
「葉柱のバイクあんの見て分かんだろ」
「まーな」
阿含は難無く銃を避けて歩み寄って来る。
「糞…何で戻って来んだよ、早々に出て行ったじゃねぇか」
「うるせェな、俺の勝手だろ。それよりヤんなら混ぜてよ、俺どっちでもいいから」
「あ゙ー…お前のせいで萎えたわ。葉柱帰んぞ」
「ルイちゃんは?結構張ってるみてぇだけど」
「──ッ、ちょ!なん、っ」
ゆるりとパンツの上から撫でられて反応しちまう。
だってヒル魔のエロい声とかキスとか。久しぶりだったし。
「阿含」
「んだよ」
「飯食ってからにしようぜ」
「…いいぜ」
「俺まだ承諾してねぇんだけど」
3Pとか。
「嫌?」
「どーしても嫌、っつうなら考えなくもねぇけどなァ」
「嫌…つうか」
自分が自分じゃねぇみてぇでわけわかんなくなるから怖ぇ。でも気持ち良いからハッキリ断ることも出来ねぇのな。
「とりあえず飯」
ヒル魔の声に頷いて部室を出る。
てっきりファミレスに行くもんだと思ってた俺はファミレスを過ぎた辺りで前を歩く2人を追い掛けながら聞く。
「ファミレスじゃねーの?」
「あ?誰がんなこと言ったよ」
「…まあいいけど…」
バイク置いて帰んのがちょっと嫌なんだけど。幸い今日明日は晴れるはずだからいいか。
結局入ったのはチェーンの居酒屋。薄暗くて仕切りがしっかりあって。案内してくれた店員は俺らとそんな年は変わんねーくらい。
とりあえず生を3つ頼んで乾杯。
「俺腹減ってんだよなあ」
言いながらヒル魔がどんどん注文して行く。
「つーかさー、お前ら明後日試合だろー?酒飲んじまっていいのかよー」
「何の問題もねぇけど」
「ルイちゃん心配してくれんの?」
「カッ!!」
「知ってんだろ?俺らすぐ酒抜ける──って覚えてねぇ?」
「……なに…」
「俺んちで前飲んだろ?」
「…いつ…?」
フライドポテトをかじりながら聞き返す。
「いつだっけ」
「夏ぐれぇか。またお前が来たんだよ、糞」
ヒル魔が何杯目かの生をまた頼んで鶏串を食いながら言う。
「夏…?」
何かあったっけ…枝豆を咀嚼しながら辿ってみるけど思い出さない方が良さ気な気もする。
「もしかして…ヤった?」
「ん」
「言っとくけどな、俺は止めたぜ」
嘘かホントかもわかんねー。だって覚えてねぇから記憶にねぇもん。
「…あんま気にすんなよ」
「んー…」
ホント覚えてねぇ。
「お前な、俺らだからいいけどな。他の奴らにぜってぇやんじゃねーぞ」
「なに、が?」
「簡単にヤらせんなって言ってんだよ」
隣のヒル魔に頬を抓られた。
どうやらそんときの俺はかなりの醜態を晒したみてぇ。
「いって」
「かっわいーの、泣きながらイッてんの」
「……ッ!」
「イかせて、お願い、っつってな」
覚えてねぇ俺も悪ぃけど頼むからそれ以上言うな。
「こっち来てるってことは明日休みなんだろ」
「……まぁ…そうだけど。俺はまだ承諾してねぇからな?」
"まだ"って言ってる時点であれだけど。
「なんでよ?俺のこと嫌い?」
「普通嫌いだろ」
初対面でフルボッコにされた奴なんて。
「ケケッ…お前"普通"じゃねぇから分かんねぇぞ」
「てめ」
「そうそう…隣の奴もそー変わんねぇじゃん」
確かに最初は最悪だ。賭けに負けて奴隷とかだったし…だからか知んねーけどヒル魔は未だに主従プレイをやらせてくる。本気で。
「俺は優しいご主人様だぜ?」
「はっ、どこが」
「2人のときはちゃんと愛でてやるし」
***
「………ん…?」
ズクン、と熱くなった気がして目を開ければカーテンの間から光が差し込んで来ていた。部屋も明るい。
目を下に向ければヒル魔の腕が腰辺りにあって。俺もヒル魔も裸、で。確か──途中から記憶が曖昧だ…
起きようと体を動かすと異物感を感じて。
「……カッ」
寝るにしても、せめて抜いて欲しい。
一晩中挿入りっぱだったからか、上手く馴染んじまって…
「……ヒル魔」
おいまじか。
起きて抜いてもらおうと思ったのにうんともすんとも。ヒル魔がここまで起きねぇって珍しい。
ここ最近忙しそうだったしなあ。会うどころかあんま寝れてねぇっぽいし。
「ふ、っ……」
ゆっくりと体を動かして抜こうとすればヒク、と締め付ける気がして顔が熱い。乱れきったシーツを捕らえて少しずつ抜く。
「…ぁ」
後少しで抜ける──息吐いた瞬間、腰の腕の力が強くなって。
「アッ!」
「……ルイ…?」
スリ、と項にヒル魔の髪が当たる。
「ヒル魔」
起きた?起きたなら解放して欲しいんだけど。
すーと寝息が耳の後ろ辺りからする。寝言かよ。
今のでまた根元まで戻っちまったし、腕の力が強くなってる。体を捩って抜くことに専念する。
「…は、ァ…」
変に擦れて自身がシーツに触れる。これじゃ変態じゃねぇか。
あ…、抜ける…。漸くあと一歩まできて、ゆっくりと動けば…。
「…ッ!!?」
腰の手がまた強くなって引き戻された。
「…あぁッ!」
また根元まで咥えちまって嫌でも反応する。
「ッん…」
結合部がヒク、と締め付けたのが分かってしまった。
「っ、ん…」
ナカもソトも、感じまくっててビクビクする。深呼吸をしてからシーツを掴み直してまた動く。
「……はァ…!」
前が擦れて感じまくってる。早く擦りたい。
勢いで抜こうと力を込めればまたヒル魔の腕で戻された。
「───ッ!!」
少し、出た。
また抜こうと力を込めようとして、やめた。
「起きてっだろヒル魔!!」
「チッ」
「ふざけんなよ、抜け…ッ」
「あ?ヤッてけよ」
「あっ!あ、ぁ」
腰を押し付けられると奥まで挿入る。
ヤバッ、キモチイイ…
「こっちもやべぇみてぇだし、な…?」
カウパー垂れ流し状態の自身をヒル魔に擦られる。少しイッてたってのもあるけど余計に煽られる。
「あぁ…、ン」
クチクチと音がして恥ずかしい。
「いつから…、起きてたん、だよ・っ」
「さっき。すっげーキモチイイ夢だと思ったぜ…起きたらお前喘いでるし」
「喘いでねぇ…ッ」
「昨日あんまシてねぇしなぁ、俺もお前が落ちた後すぐ寝たんだよな」
「せめて、抜け・よっ…!」
ゆるゆると注挿を繰り返されて声が上擦る。
「だよなー」
「…てめ、っ…ン」
「一回抜くぞ」
ゆっくりと抜かれて中から乾かなかった液体が零れ落ちた。
「くっそ・っ…」
仰向けに転がされて足を抱えられるのが分かると恥ずかしくて目も当てられねぇ。ヒル魔が中の液体を潤滑油代わりに絡めながら腰を進めてくる。緩んだソコは難なくヒル魔を飲み込んだ。
そのあまりの光景に顔を手で隠すと一気に腰を引き寄せられてシーツを掴む。顔を逸らすと阿含と目が合った。
は?
「あ、あ、アッ、ヒル魔…だめ、ッ…!阿含、が、っ」
「あ?昨日の夜からいるだろーが」
なんかもうグダグダだ。思考追い付かねぇ。きもちいい。そこ、だめ、いい。やめろ。死ぬ、イイ、イク。
***
「………最低だお前ら」
いやもっと最低なのは俺なのかもしんねぇけど。シーツはぐちゃぐちゃだし腰痛ぇしもうやだ。帰りたい。