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ケケケ…、と笑う顔が頭から離れねぇ。
「……。カッ!」
普段から悪魔だの何だの言われているせいか、笑顔はあまり見たことねぇ。でもたまに見せる笑顔はすげー優しくて。
「………くそ…」
どーしてくれんだ。
俺はホモじゃねぇ。キレーでエロい姉ちゃんがタイプだし、女性独特の柔らかい丸みを帯びた身体を抱くのが好きだ。
それなのになんでヒル魔のことなんか考えちまうんだ。あんな、骨ばった男……。
一人でいればいる程、考えないようにすればする程考えちまって。一人でいるから悪いんだ。
「………」
携帯を取り出して適当にかける。何コール目かでガチャ、と音がして。
『ルイくん?なに?』
「………暇してねぇ?」
『…いいよ、すぐ準備するね。迎えには来てくれる?』
「………。支度終わったら連絡して」
『車出そうか?今日はお休みだったからいいよ、特別』
「…ん」
“彼女”は飲み屋で知り合ったホステス。キャバクラで働く21歳で週1くらいの間隔でたまに会う。
会って、セックスするだけだからセフレ?かも。
“彼女”の高級外車でホテルまで。
「…どしたの、なんか今日ヘン」
「そうか?」
「……。まあいいや。しよ」
「ん」
キスをしながら思う。
彼女は俺のことを深く詮索してきたりはしない。年上だからか。
代わりと言ったら何だが、ベッドの中では激しく乱れる。今も…
「すげー洪水。俺の喰ってる」
「あっ、ン!や、ァあン!あっ、あ、ッ」
盛大に喘いでビクッと跳ねる。
「あ…」
「イイ?」
聞けば頷いて舌を絡める。応えながら膣内を往復すれば締まって。
「……っ。」
数回往復してからナカから取り出して腹に向かって擦り上げる。
「…‥‥ッ」
数回に渡ってドクッと下腹に欲望を吐き出した。
「…なんか今日早くない?」
「カッ、うるせー。」
「ふふ」
チュッとキスされてティッシュで拭うとバスルームに消えた。
「……………」
「……一緒に入る?」
「や…、いい」
「そ」
タオルを巻き付けてテレビをつける。つまんねーAVを見ながらビールを煽ってたらガチャ‥、とバスルームのドアが開く音がして。
「楽しい?」
ソファーの後ろから首に腕を回されると髪が当たってふわ‥、と風呂上がりの匂いがした。
「お前の方がイイよ」
「…なら消して」
「ん…」
「ルイくん眠そう」
「ヤったら一気にキたかも」
最近あんま寝れてねーし。
「…じゃ、寝よっかあ」
連れられてベッドに潜り込むと彼女が擦り寄ってきて。
「…おやすみ」
キスを合図に俺は目を閉じた。
目を開ければ、既に彼女は起きていて。2人で軽いモーニングを食べて別れた。
部屋についてからのんびりシャワーを浴びて。学ランに着替えて髪をセットしてゼファーに跨がる。
思いっきり遅刻だとか、もう昼休みだとか、先公の目は気にせず教室に着けばいつもの光景。
「あー‥だる。」
窓際の席に着けば日差しが暖かくて、どうしても睡魔に勝てなくて目を閉じた。
だから、その後に起こったことは知らない。
さら‥、と髪を撫でられた気がして目を開ければ、教室には誰もいなくて、否。代わりにヒル魔が一人目の前の席にいて、窓を背にパソコンを弄ってた。
「…………………………は………?」
日差しはいつの間にかオレンジ色に変わっていて、今が夕方なのが分かった。
「おう起きたか糞カメレオン。冬眠は終わったかあ?」
ケケッと笑った顔がオレンジ色で眩しい。
「……なに…?」
寝ぼけ眼を擦って携帯を見れば既に5時を過ぎていて、ヒル魔からメールが入っていた。
「…なに、これ」
差出人:ヒル魔
件 名:no title
本 文:賊学まであと10分
1分置きに9分、8分…とメールが来てて。
今から1時間も前の時間になってる。
「…さあ。なんだろうな?」