同居
「………………」
「………………」
「………あの、えっと…間違えた…」
バタンとドアを閉めて部屋番号をメモと照らし合わせて再度確認する。
「合ってる……」
じゃあ何、今の。幻覚?
「おい葉柱さっさと入んねェか」
ドアが開いてヒル魔がそう言う。
「………お…じゃま、します…」
ペタペタとヒル魔が裸足で歩く後ろをついて行くとリビングに案内された。
「親父とどうゆう…?」
「飲み屋でちょっとな」
ホントかよ?
言われてみればヒル魔は今年30だし、世話好きだと思うし、お節介かもしれないし、きっと料理も美味いんだろうし部屋も見るからに広そうだ。
親父が言ってた人はヒル魔…?勝手に知らない人物だと決め付けてどんな奴かといろんな期待やら妄想やらをしてインターホンを鳴らすのさえドキドキしていた5分前の俺の緊張は無駄に疲れただけ、と言うことだ。
「親父…ヒル魔だって、教えてくんなかった…」
「あ?そうなのかよ?」
会えば分かるだろとか今思えばそんなようなことは言ってたような気はするけど。
差し出された黒い液体はヒル魔にしては甘くて体が熱くなった。
「いつから決まってた?」
この話。
「………卒業同時に、」
「なッ…」
もう恥ずかしい。穴があったら埋まりたい。
「連絡してこねぇしよ、」
「ゔ…」
「お前からしてこねェなら俺からしてやる。携帯貸せ」
「あっ、………」
ヒル魔は俺の上着のポケットから携帯を抜き取って数秒カチカチすると自分の携帯と赤外線を通信し出した。
「……お前の部屋はあっちだ、なんか荷物来てたぞ」
「うん…」