年始
ピンポ―――…ン
午前10時、ヒル魔邸。
ピンポ―――…ン
「…勝手に入って来い。鍵ならあっだろ」
「開けてくんね?」
「………………」
焼きが回ったとしか考えられねぇ。
渋々鍵を開ける。
「あけましておめでとうッッ!」
ルイの顔が見えたと同時に言われ。
「今年もよろしくッ!大好き!ヒル魔!」
でドアを閉めてハグ。
&キス。
テメーはどこの外国人だ。
「えっちしよ?」
「は?」
「姫始め!しよーぜ」
「シねぇよ」
「ナンデ???」
コイツ飲んでんだもんよ。
酒臭ぇ。
俺酒が入ってるお前となんかシたくねぇよ?
「……………」
暫く黙ってればスーツを脱ぎ出した。
シュルッ…とネクタイを緩めながらご丁寧にこっちに流し目をくれやがる。
「ひるまぁ…」
甘く呼ぶ声に下半身が疼きそうになる。
「ひるま…」
次に呼んだところで落ちた。
すぅ、すぅ、と寝息が聞こえる。
そんなこったろーと思ったぜ。
大方親父さんたちに付き合ってたんだろ。
仕方無くベッドルームに連れてってやる。
「妖、一…」
布団に入った途端寝言かよ。
普段から呼びゃぁいいものを。
無駄に長ぇスーツをしわにならねぇようにハンガーにかけてシャツのボタンを緩めてやる。
ネクタイも外してやれば気持ち良さそうに寝入った。
…世話が焼ける。
あ〜頭痛い。
ここ、は…ヒル魔んち。
のベッド。
ドアを開ければパソコンに向かうヒル魔。
いつものこと。
正月らしくもなく黒い上下。
いつものこと。
違うのは………眼鏡。
初めて見た。
カッコイイ。
「…糞カメレオンめ。酔い冷ましてから来い」
「うん…ごめん。でも早く会いたかったから」
「…糞」
「あけましておめでとう。今年もよろしく」
恭しく言えば。
「おう。《大好き》ってのは言わなくていいのか?」
「カッ!!!?俺そんなこと言った!!!?」
「《妖一大好き!えっちしよ!》って言われたぜ」
「え…シたの…?」
ちょい不安。
「さぁな」
「ぇ、どっち?シたの?シてないの!?」
「………自分の躯に聞けば分かるんじゃね」
それもそうだな。
「………腰は…痛く、ない」
「誘うんだったら素面のときにするんだな。お陰で据え膳喰い損なっちまったじゃねぇか」
「……………カッ…馬鹿野郎……」
RRRRRRR…
突如部屋に鳴り響く呼び出し音。
「―――嫌な予感がする…」
「早く出ろよ。煩ぇ」
ピッ
渋々出れば。
『ルイっ!どこほっつき歩いてる。早く戻って来い!!』
ブツッ
「親父…だった」
「なら早く行け」
「ヒル魔…紹介したらだめ?ヒル魔ンとこにいたって」
「都議の次男坊が付き合ってるのは男だってか」
「……………」
「アチラさんは《良いオトモダチ》だと思ってんだ。思わせときゃいいだろ」
「ヒル魔…ごめん」
「糞!早く行かねーとやべぇんだろ」
「うん………大好きヒル魔。眼鏡カッコイイよ」
素早く口付けて玄関に猛ダッシュしてドアを閉めた。
あぁ、恥ずかしかった。
帰りに御節持ってこう、そう思って歩き出した。
…糞。
可愛いじゃねーか。
やっぱり喰っときゃ良かったかもしんねぇ。