ファーストキス。それは女の子の夢とか何とか。私からしたら普通のキスと変わらないしそれでもって檸檬の味なんかしないし、彼氏が煙草吸ってるって言う理由で煙草の味がするなんてもっての外。だってキスする前に彼氏が檸檬食べてるとか嫌じゃね?自分まで酸っぱくなっちゃうし。それに煙草の味って何よ、煙吸ってんのと変わらないじゃん。私まで一緒に肺がんにさせる気ですか?煙草の煙は主流煙より副流煙の方が身体に悪いって学校で習わなかった?てか、皆ファーストキスなんてとっくにしたんじゃないの?



なんて女子更衣室で第二部隊のお嬢様方と話してたのはつい三十分前。無論私は無い。多分慈乃さんはもうとっくにしてるだろうし、綾寧ちゃんもなんやかんやでしちゃってそうだし、蘭美は…無いな。とか第一部隊の部屋を目指し獅堂さんに貰ったビターチョコ片手に、のろのろと歩いて考えてたらどっかから「お黙りっ!!」って聞こえた気がしたけど、気にしない。おっと、やっと着いた。と思ったらやけに部屋の中が騒がしい。相変わらず仲いいなぁ、第一は。と半分呆れながら心の中で思いつつ、コンコンとドアをノックしながら「すいませーん」と言ってドアノブに手を掛け、返事を待たずにドアを開けた。いや、開けてしまった、と言う方が正しいかもしれない。




「失礼しまー「これは俺が貰ったー!!」




私がドアを開けたことによって、食べかけのポテトチップスのり塩味を左手にを持った御子柴さんが全力でダイブしてきた。ゴツンッ。とお決まりかのように私と御子柴さんのおでこは鈍い音を上げて衝突した。ついでに言うと唇も。




「ってぇ……悪い、大丈夫か?」

「…えぇ、唇以外は」

「あっ……」



そう言った瞬間、御子柴さんの顔がみるみる内に赤くなっていくのがすぐに分かった。多分私も真っ赤になりながら、唇以外は、なんて口にしてしまったであろう。恥ずかしすぎて俯きながら御子柴さんにそっと書類を差し出すと、部屋の奥から声がした。




「笑太くーん、どうしたの――って、」

「御子柴隊長、どこか具合でもごがごが」

「お、お邪魔しましたぁ〜!行くよ、羽沙希くん!!」



その声の主は式部さんと羽沙希くんで、心配しながら来てくれたみたいだけど状況を理解した式部さんはちょっとばかし空気の読めない羽沙希くんの口を手で押さえて退散してくれた。私も恥ずかしくて早く此処から立ち去りたいという気持ちを抑えきれず、し、失礼しましたっ!!と言って立ち上がって一歩目を踏み出そうとした時、御子柴さんの手に阻止された。




「ごちそうさん」

「…っ!!」





その後、ドアは相手の返事をしっかりと聞いてから開けようと私は心に決めた。因みに私のファーストキスは檸檬でも煙草でもなく、のり塩だったのは秘密。






 




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