8月17日。猛暑。この日は一年に一度、まぁ自分で言うのもなんだが俺の誕生日。彼女と二人っきりで一日中一緒にイチャイチャ過ごす、なんてのは夢のまた夢な訳で。神様の悪戯だか何だかしらないが、残念なことにここ三年間はお互いに運悪く朝から仕事。何故か俺は厄介な死刑囚をまわされるし、彼女も彼女で法務省の大臣秘書と言う役柄だけあってかなり忙しいみたいだ。まぁ、結局次の日は一緒に過ごすんだけども…
「…今年もまた一人、か」
そんな事を考えながらなんとか任務終わらせて自宅へ向かう。返事が返って来る筈無いのは分かってるが、一応期待してみて「ただいま〜」とか言いながらマンションの扉を開けて部屋に入った。勿論返事が返って来ることはなかった。
(ですよね…)
真っ白な壁に掛かったシンプルな時計に目をやった。1時38分。俺も結構遅くなっちまったけど、彼女はもっとハードワークしてんのか…きっと獅洞大臣のことだ、柚原さんも吃驚なほど仕事溜めてたんだろ。他人事かもしんないけど大変なんだな、なんて思いながら着替えてリビングの椅子に座る。
「ん、これ…」
睡魔に襲われながらもなんとか目を擦ってテーブルの上にちょこんと置かれた物に手を伸ばす。赤いリボンが丁寧に結ばれた小さい白い箱に、半分に折られた手紙の様なもの。その手紙に書かれてる字の書体で、それが彼女によって書かれたものだと言うことが分かった。
『Happy Birthday To 笑ちゃん。
笑ちゃん、誕生日おめでとう。やっぱり今年も今日中に行けそうにありません。ごめんね。
でも、お昼に少し時間が空いたので、プレゼントだけでも今日受け取って貰いたくて珠ちゃんにプレゼントと手紙を頼みました。
きっとこれを読んでる時は、もう18日かな?
早く笑ちゃんに逢いたいなぁ。
大好きだよ、笑ちゃん』
睡魔によって遠退いていく意識の中で読んだ手紙に、気付いたら俺の口元はかなり歪んでいた気がする。そんな事も気にせず、俺は眠りに着いた。暫くして帰ってきた彼女に気付く事もなく。
「ただいま…って、寝ちゃってるよね」
─────ちゅっ、
cheek kiss mark
(ふぁ〜あ…寝坊するとこだった)
(笑太くん今年は二つも貰ったの?)
(えっ?ネックレスだけだぞ…)
(ここ、頬っぺ。鏡…見てくれば?)