冬と言うだけに、日が沈むのはそう遅くはなかった。まだ午後の6時前だと言うのに辺りは日が落ちて真っ暗だった。大体、クロスが列車で酒なんか飲んでなきゃもっと早く着くはずだったのに。



黒の教団本部。断崖絶壁に位置してることもあって門まで辿り着くには相当な時間と体力を消耗した。



「門に……顔…?」

「こいつぁ、ただの門番だ」



『ク、ク、クロス元帥だ!ヒィェェェ!』



「おい門番、とっととコムイに繋げ」




穴開けられたくなかったらな、と門番のアレスなんちゃらとかいうやつに断罪者を向ける。いや、顔が笑ってないけど。



《やぁクロス元帥!待ってましたよ〜…ん?その子が…?》



アレスなんちゃらはクロスに撃たれるのが嫌だったのか、直ぐ様室長室へと繋いだ。すると何処からか"コムイ"と言う人の声が聞こえてくる。



「あぁ、詳しくは中で話す。つか寒ぃんだからとっとと中に入れろ」


『ヒィェェェ!!か、かか、開門〜!!』


クロスに怯え過ぎだろ、アレスなんちゃら。



《あぁー!僕まだ開門って言ってないのにー!》



……今日から、ここで過ごす…のか。何か凄い不安になってきた。



















*




















門を通り教団に足を踏み入れた。室長室へと向かう途中には、クロスの団服と似たような団服を来た人が沢山居た。



(あれが…エクソシスト…?)



「何だ、怖ぇのか?眉間にシワ寄せて」

「…違う。エクソシストって、こんなに浮わついた奴等なの?」



思わぬフェリスの言葉にクロスは不意を突かれたような顔をしたが、突然「ハッハッハッ!!」と笑い出した。ただでさえ"クロス元帥"と言う存在で彼等からの視線を浴びていたのに、今の笑いで驚いた彼等は一斉にこちらを向いた。



「確かにあいつらはまだまだ弱ぇ。まぁ、強ぇのも居るがな」



流石俺の弟子だ、よく解ってんじゃねーか!とクロスの大きな手に頭をワシャワシャとされる。別に嫌な気はしないけど、何かムカつく。





そうこう言ってる内に気付くと室長室前まで来ていた。クロスは何も言わずに勝手にドアを開ける。



「ちょ、ノックは……」



そう言いながらもクロスの後に付いて室長室へと入る。そこには、さっきの声の持ち主らしき人が白いベレー帽の様な帽子に白衣を着て、眼鏡を掛けて立っていた。





「あ、おかえりなさい、クロス元帥。それと…フェリスちゃん」





何故かその一言にとてつもない温もりを感じて涙が出そうだった。彼とは初めて会う筈なのに、彼はその一言で何処か懐かしくて暖かい気持ちにさせてくれた。



「僕は科学班室長のコムイ・リー。気軽にコムイって呼んでくれて構わないから」

「…フェリス、です」

「これから宜しくね、フェリスちゃ「いや、」え?」

「こいつは"ノゾミ"だ。ここでフェリスなんて呼んだら一大事になっちまう」

「─っ……そうだったね。じゃあ改めて宜しくね、ノゾミちゃん」



差し出されたコムイの手を握り返し握手をする。"ノゾミ"それがここでの名前、か。第二使徒(エクソシスト)実験から脱走した私は、本名を知られてはいけない。もし見つかったら命は無いだろう…



「…こちらこそ、」



何だか、この人は…コムイは信じれる気がした。


握手したままの手を引っ込めようと思った矢先、その手はコムイによって強く、そして暖かく両手で握られた。



「……え、コム「よく、」…?」



「よく、幼ない時にあの辛い実験に耐えたね。頑張ったんだね。ごめんね。実際に経験してない僕に、こんな事言う資格なんてないけど…本当にお疲れ様。もう、ここでは君をあんな風に扱う事は…ないっ…僕らは、今日から…家族だ…っ…」




「な、ん…っ…」





なんで……なんで、この人は、初めて会った私なんかに、涙を、流せるの…?意味、分かんないよっ……コムイの方が、もっと辛い思いしたんじゃ、ないの…?なんで、そんなに…優しく、してくれるの…?





「……っ…うっ…」



気付いたら、自分の瞳からいくつもの雫が溢れ出していて。その雫は静かに頬を伝って落ちて行った。





「ご、ごめんね。君まで泣かせるつもりじゃ「そうやって、」…え、」

「何もかも全部…自分で背負わなくても、良いんじゃ…ないですか?」





コムイはきっと、今まで苦しんで来た人達全ての苦しみを背負ってる。





「貴方が背負いきれないものは、私も…支えます。だからっ……一人で何もかも背負おうとしないで、下さい…」





コムイは瞳に溜まった涙を手で拭い、私にそっと優しく、





「ありがとう。君のお陰で少し楽になったよ。でも、僕は背中が広いからね」





と、一言だけ言って私に笑い掛けた。すると何も無かったかの様にまたクロスと話し始める。なんて、凄い人なんだ。



暫くクロスとコムイの会話を口を挟まずに聞いていた。クロスは全てをコムイに話した。私の過去、イノセンス、クロスと出会ってからの事、全てを。ほんの少し、ほんの少しだったけどその話をしてるクロスの横顔はどこか悲しそうだった。





「まぁ、今話した事が全部だ。あとは任せた」

「また、行かれるんですね」

「まだやる事が残ってるからな。それとコムイ、ノゾミに手出したらぶっ殺す」

「え、や、やだなぁ〜!!そんな事しませんよ〜!いくらノゾミちゃんがリナリー並ぶくらい可愛いからって…」



…コムイって、こんな人だっけ…?


「クロス…行っちゃうの…?」

「そんな悲しい顔すんな。行けなくなっちまうだろうが…。っと、そうだ」



クロスは何か思い出したかのように私に、手を出せ、と言ってそっと差し出した掌にあるものを乗せた。それは真っ白なティムキャンピーとそっくりのゴーレムだった。



「アル…」

「こいつが居る。それに、また直ぐに会える」



大丈夫だ、お前は強い。そう言って私の頭をワシャワシャとして優しく笑い、室長室から出て行ってしまった。クロスのこんなに優しい顔、初めて見た。




「クロス元帥自身も、ノゾミちゃんに出逢って大分変ったみたいだね」





クロスが変わった…か。

それ以上に私はクロスに変えて貰ったよ、クロス。










クロスを見送ったあとは「じゃあ早速、教団を案内するね!」と言うコムイの後を付いて行った。











*This story is to be continued.





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