私は大切な友達を、仲間を、殺した。



「もう一度イノセンスと同調するんだ」



怖かった。皆を失うのが。自分が死ぬのが。



「再生まで約480秒──」



許せなかった。──を、───を、私たちを苦しめた奴等が。



「人間の希望になってくれ!」










私は許さない、人間を。




















真夜中のロンドン。凍えるような寒さに対抗して、体は口から言葉を放つと共に白く暖かい息を出して寒さを訴えている。おまけに大粒の雨。



(何、してんだろ…)



街の明かりは殆ど消え、ぽつり、ぽつりと距離を開けて何本かの街灯が街に灯りを灯す。ザァザァと降り続く雨の中、ピチャピチャと裸足で歩く足音と雨音だけが響く。


気付いた時には、この街にいた。何時来たのかは分からない。どうやって此処に来たのかも。目が覚めると、煉瓦の家々とさんさんと真っ白な雪が降っていて、それから暫く街を彷徨って、いつの間にか真っ白な雪は雨へと姿を変えていた。



(このまま、死ぬのかな)



散々裸足で雪や雨の中歩き回ったせいか、もう足に感覚はない。別にこのまま死んでも構わない。やりたいことも無いし、そもそも今の私に"感情"というもの自体、存在しているかも分からない。



「オイ、お前」



歩くことを止めた私の前に、赤い長髪の背の高い男が立っていた。



「お前、俺と来い」

「………誰…」



赤髪の男は問いには答えず、自分のコートを私に羽織らせひょいと私の体を抱きかかえる。



「エクソシストになれ、フェリス」

「…エクソ…シスト…?」

「あぁ、お前にはその力がある」



そう言って赤髪の男は私の手を握る。その手にはいくつものリングが指にはめられていた。



「…?…これは…」

「イノセンスはこれだけじゃない」



赤髪の男の視線の先には、私の腰に付いている真っ黒のホルスターと、ホルスターとは真逆色をしたの真っ白な拳銃。



「それと、お前にはもう一つ。AKUMAの居場所を一定の範囲なら特定できるはずだ」

「……うっ…イノ…センス、…アク……マ……」



"イノセンス"や"AKUMA"。ピンとは来たものの、思い出そうとすると酷い頭痛に襲われた。



「今は無理に思い出さなくて良い。ノアと遭遇して戦ってた所で、ノアの連中に一部の記憶を消されてこの街に飛ばされたんだろ」

「…貴方は…誰、なの…?」



ふと気付くとすでに雨は止んでいて、朝日が顔を出し始めていた。



「クロス・マリアン。教団のエクソシストで、まぁ…元帥だ」



お前、今日から俺の弟子な。と真っ直ぐ私を見つめる真紅の瞳には、何故か温もりを感じた。



「…宜しく………クロス…」

「"さん"を付けろ、さんを」













*This story is to be continued.



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