目の前にぼんやりと広がる真っ白な天井。もうどれくらい経つだろうか、正直この天井をずっと見ている事に飽きがきている。
「ナマエ、」
そう呼ばれると同時に真っ白な天井がカラフルな道化士の衣装に変わる。
『ぁ、ケフカ様…』
「熱が下がりませんねぇ」
ケフカはナマエの額に手を乗せ体温を計る。自分の体温よりも低いケフカの手がとても心地良い。
ナマエは昨晩から風邪をひいてしまい、高熱の今がピークの状態。その為、ケフカの寝室のベッドでケフカから看病を受けていた。
『ごめん、なさい…』
「何を謝っているんですか」
『ケフカ様のお手を煩わせて…』
「これくらい平気ですよ、だから早く治してちょーだい」
『はい…』
額に置かれていた手が頬に移動すれば、ゆっくりと優しく撫でてくれた。
『ケフカ様の手は冷たくてとても気持ちが良いです』
「そーお?ナマエが火照り過ぎなんじゃないの」
『かもしれませんね、へへ…』
へらり、と笑うナマエ。身体が怠い所為か、笑っているにも関わらず何処か辛そうな雰囲気がケフカには分かった。
「全く、何で風邪なんかひいてしまったんですかねぇ?」
『…それは、』
「それは?」
ケフカの問いにナマエは少しだけ視線を横に逸らし小声で答えた。
『…ケフカ様が毎晩、その…愛でてくれる、から…?』
もにょもにょ、と恥ずかしそうに言葉を紡ぐナマエ。
「ぼくちんが悪いみたいに言うねぇ」
『そ、そうじゃないですけど…』
「別に怒ってるわけじゃないですよ」
『…ホントですか?』
ナマエが視線を戻すとケフカはニヤリと笑っていた。天井とは違う白さが徐々に自分の方へ近づいて来る。…――コツン、と額と額が合わさる音。
『ケフカ、様…?』
「風邪が治ったら、また沢山愛でてあげますよ」
その言葉に顔の火照りが一気に増したナマエ。ナマエは布団から両手を出すと顔を隠すように両手で覆った。
『ケフカ様のスケベ…』
「おや、今頃気付いたんですか」
ヒョッヒョッ、と独特な笑い声を上げるケフカ。もう一度、ナマエの額に手を置けばゆっくり眠れるようにスリプルの呪文を唱えた。
『ん…、ずる、い…ケフ、カ…さ…――すぅ、』
魔法を受け途切れ途切れに紡がれる言葉は直ぐに眠りの淵に落ちてしまう。
「早く元気なナマエにお戻りなさい」
ケフカは薄く開いたナマエの唇に口付けを落とすと、ナマエの肩上まで布団を掛け直した。整った寝息を聞き取れば、ケフカは寝室を後にし職務へと戻って行った。
病 は 何 処 か ら
(…――嗚呼、早くナマエを抱きたくて仕方がありません)
--END--
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