『本当に申し訳ありませんでした! 』


深々と頭を下げるナマエ。その相手はレオだった。





師 と 私 と 





始末書は上司であるケフカが処理してくれたものの、流石に当の本人から何も無いというのは失礼だと、ナマエはレオを訪ねていた。



「気にするな。どうせケフカに言われるまま、それに従ったのだろう?」

『ち、違います!寧ろケフカ様は止めてくれた方です…』

「ケフカが?」



普段のケフカからは考えられない、とレオは少し驚いていた。どうせ、ケフカの事だからナマエを使って良くない事を考えていたんだろうと、そう思っていたからだ。



「アイツがな、珍しい事もあるもんだ。それより、師匠と呼ばなくなったんだな?」

『はい、ケフカ様に名を呼ぶよう言われたので』

「そうか。取り敢えず、今回の件は気にするな。ただ、次の交戦時は待機を命じる。ケフカからの報告に寄れば精神が安定してないそうじゃないか。精神が不安定なのはケフカもそうだが、ナマエはまた別物だろう。落ち着くまでは仕方あるまい」

『分かり、ました…』



レオからの命令を受けたナマエは予想出来ていた事にも関わらず肩を落とす。そんなナマエにレオは慰める様にナマエの頭へ、ポンと手を乗せた。



「そう落ち込むな。お前の魔法は凄まじかった。感情のコントロールが出来る様になれば、それは我々帝国軍にとって大きな力になるからな。期待しているぞ」

『将軍…、ありがとうございます。それでは、私はこれで失礼しますね』



ナマエはレオに向かってお辞儀をするとレオの居る部屋を後にし、自室へと戻った。

今日はケフカに一日ゆっくり休むよう言われていた。使い過ぎた魔力の回復も兼ねてとの事だ。ナマエは自屋に戻るなり、ベッドに身体を伏せた。



『…家族なんて私にはもう関係ないと思ってたのにな、』



あの時の事を思い出すと不思議に思う。本当にあれは自分の感情だったのか。心の奥底に深い闇でもあったかのような…。本当はケフカ様に認めて貰いたかっただけなのに。今更、家族なんてものを思い出したってどうしようもないのに。



『変、なの…』



ナマエは考えながら目を閉じると、そのまま眠りに落ちてしまった。






*****




眠りに落ちてどれくらい時間が経っただろうか。眠りから覚めたナマエはゆっくりと瞼を開く。



『…ん、』

「おはよう、ナマエ。ぐっすり眠っていましたねぇ」



ぼやけた視界に映るのはカラフルで良く知ったシルエット。



『ケフカ、様…?』

「ワタシ以外有り得ないでしょう」

『…それもそうですね。おはようございます、と言っても夕方ですけど…。わざわざ部屋まで来て下さったんですね』



カーテンの隙間から漏れる日差しはオレンジ色で、それは夕方を知らせるものだった。



「ちゃんと休んでるか見に来たんですよ。まぁ、その心配も必要なかったみたいだねぇ」

『はい、お陰様で。あ、今朝、レオ将軍に謝罪をして来ました』

「ふぅん。アイツ、なんか言ってた?」

『私があんな風になってしまった原因がケフカ様だと思ってたみたいだったので、きちんとお話しておきました』

「そんだけ?」

『はい、それくらいです。レオ将軍には気にするな、と。それから魔法の事を褒めて下さって、励ましのお言葉まで頂きました。…兵士に尊敬されている理由が良く分かりました』



レオの言葉を思い出しながら、励まされた事を少し嬉しそうに表情を綻ばせるナマエ。それを横目で見ていたケフカは良く思わなかったのか軽く舌打ちし、ナマエを寝台へ押し倒すとそのままシーツに縫い付けた。



『…ッ!ケフカ、様…?』

「そんなにアイツに言われた言葉が嬉しいか?」

『え…、』



ナマエを跨ぐように身体を重ねるケフカ。その表情は険しく怒っているように見える。
突然の事に戸惑うナマエ。冷たい視線が突き刺さる。ナマエはその視線から目を背ける事は出来なかった。





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