私の家族を殺したのは他でもない、目の前に居るケフカ師匠だ。あの時、降り注がれていた魔法は全てケフカ師匠に寄るもの。最初は知らなかったけれど、すぐに師匠自身から知らされた。
私がひとり取り残されて可哀そうだったから、等とそんな生温い理由で私は拾われた訳ではない。私の魔力、理由はそれだけ。それでも、ひとりだった私を救ってくれたのは師匠だ。だから私は一生この人の傍を離れないと誓った。何があっても。
だけど、ひとつだけ出来ない事がある。それは師匠とは全く反対の事…人を傷付ける事だ。目の前で最愛の家族を失った所為だろうか、私にも分からないけれど、どうしても出来なかった。
師 と 私 と 、
あれから数日後、再びケフカの元に召集が掛かる。
『師匠、レオ将軍からの要請です』
「やれやれ、まーたですか」
ケフカは首を横に振り「つまらーん」と口にしながら部屋を後にした。向かった先はレオ将軍の元。向かうケフカの隣にはナマエの姿があった。
「ハイハイ、呼んだー?ぼくちん登場〜」
レオ達が待つ場所へ辿り着くと、やる気の無いケフカの声がレオ達の耳に響く。
「ケフカ!遅いぞ!一体、何をして…ん?」
指定されていた時間よりも大幅に遅れたケフカにカンカンだったレオ。怒鳴っている途中、ケフカの隣にいる人物に目が移った。
「ナマエじゃないか、何故君が?」
『お疲れ様です、将軍。あの、実は…』
「今回、ぼくちんお休みだからァ」
ナマエが説明をしようとするとケフカがそれを遮る。
「な、何だと…?」
『あの、そうじゃなくて!その、私が無理を言って師匠にお願いをしたんです。だから師匠は悪くありません。将軍、私を行かせて下さい』
「まったく、ナマエは馬鹿正直だねぇ」
余計な事を言わなくても良いのに、とケフカはレオから視線を逸らした。
「ケフカ、本当に良いのか?確かにナマエはかなりの実力だが、まだ戦場には出た事がないだろう」
「ハイハイ、分かってるって」
「またお前はそうやって軽い気持ちで…!」
先程からレオは怒ってばかりだった。それはいつもの事ではあるが、状況が状況なだけに黙っては居られない様子。
「ワタシが、軽い…?」
「そうだろう!今までお前だけだったのに何を突然…ッ!」
『し、師匠!』
突如、レオの胸倉をケフカが掴み上げた。
「ふざけるな。ワタシの軽い気持ちでナマエを?本当にそう思ってるのなら、お前はどうしようもない馬鹿ですねぇ」
レオを映すケフカの眼は殺意に溢れていた。レオは暫く沈黙した後、溜息を吐き「わかった」と一言口にした。
「…良いだろう。その代わり無茶はするなよ、ナマエ」
『はい、肝に銘じます』
…――こうして、レオの許しを得たナマエは初めて交戦地へと向かった。
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